H301
城が揺れる。一応迎撃態勢は整えたが、城で戦う以上、城が揺れるのは仕方ない。一応城の中でも頑強な処へと誘導する手はずではあるが……それがうまくいくかはわからない。城の中に何人の敵が入り込んだかわからないしね。
そもそもの人数が不明だ。もしかしたらここに……そうここにその敵が現れて次の瞬間には私が殺される――なんてことはもありえるかもしれない。
姿が見えない敵というのは本当に厄介だ。一応マナが消失してる地点に逆に何かいるってことがわかってるが、もしかしたらそれさえもこっちの目を騙す何か――なのかもしれない。
「大丈夫ですよキララ様。私たちは負けません」
「うん、キララは私達が――守る」
友人二人がそういってくれて心強い。さっきから城の揺れが激しくなったが、人形たちが戦闘に入ったんだろう。私たちが使ってるのはラーゼにいつもついてるぬいぐるみとは違ってあんな愛らしい姿はしてない。
一応人型だが、まだまだ不気味だしなによりも戦闘に特化させてるのもあって、普段から侍らせて置くような代物ではない。
なにせ体中に武器を仕込み、動力のマナで無尽蔵に動き、更には自己修復まで兼ね備えた人形兵士だからね。それに更にネジマキ博士はその個体を細分化させて、色々と役割も持たせてるし、きっとたくさんの情報が入ってくるだろう。
その情報をもとにさらなる分析を加えれば、敵の正体が判明するだろう。タワーの方へといった敵とも交戦は始まってる。こっちは純粋に人種だけで応戦してるから連携を重視しして、負傷したら即下がらせ、軍で支給してる回復薬で即回復して包囲網を構築してるって感じだ。
倒せるのがいちばんだけど、無理はしない。いや、相手がわからない今の段階では無理のしようがないというのが本音だ。なにせ相手がわからないのに、無駄に攻勢をかけるなんてそれは無理ではなく無謀だからだ。人種の戦い方は相手をしり、調べ上げ弱点を突き、多大の犠牲のもとで勝利を掴み取る――それしかない。
でもだからって命は一つである。多大な犠牲がいつだってあるとしても、その命の犠牲には意味があるべきだ。無駄死にはさせたくない。せめて……ね。彼らの命を有効に使う……それもまた、きっと上に立つ者の責任だろう。
(死なないで……なんて今の私にはいえない。なんて聖女なんでしょうね)
あきれた聖女だと思う。けど一つの命も無駄にはしないと、私は誓って戦場を思う。




