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H289

 アナハイムの街は本当に活気がある。戦いをしてるというのに、別段誰の顔にも悲壮な面持ちもない。これが本当にあの人種なのか? と目を疑わざる得ない。

 自分の印象では、人種は弱く、常に下を向いてるような……そんな印象だ。肉体にもマナにも恵まれない、這い上がれない種だ。だからこそ、上を向くことをやめてしまった……いや、昔もそうではなかったな。一部だけだが、そんな境遇を改善しようとしてる奴らは確かにいたが。


 だが人種の大部分はずっと下を向いてただろう。人種が弱いのは歴史が証明してる。そして何をやっても、その数以外ではなんの取り柄もないとわかってるからこそ、誰もが下を向き、そしてやせ細ってた。


 だが今のアナハイムはどうだ? 誰も下を向いてる奴なんていない。肌も髪も昔とは比べるべくもなく、そしてその身に着けているものは全員小奇麗だ。


 昔はそれこそ服とも思えないぼろ布を着てる奴らの方が多かったはずだ。でもそんな奴は今や一人も視界に入ることはない。


「おい、これはなんだ?」

「何をやってる!」


 一応声を抑えて、ふらふらと露店に寄っていった特攻部隊の一人を追いかける。すると確かにそこには腹を刺激するようなにおいがあった。そしてその元はどうやらその場で作ってる料理から発せられてる。

 なにか食材を揚げてる? 丸っこいそれが三本くらい串にささってる。


「たまらん!」


 そういってそいつが素早く店頭に並んでた一つをとって口に運ぶ。もちろん金なんて払ってない。そもそも俺たちは人種の国の金などもってない。オウラムも一応ライザップを見習って貨幣を導入してるが、まだまだ物々交換が多い。オウラムの周辺に住んでる種なんて当然のように物々交換だからな。

 他の多くの種族には貨幣という価値観がない。だからここの金を持ってるべくもない。まあ我らの動きがただの人種に見える訳もないから、店主も気づいてないが。


「こっ……これは! うまい!!」


 そこまでか? なんかめっちゃ震えてるぞ。そう思ってると、他の奴らまで目にもとまらぬ……いや、自分には見えてるが店主には目にもとまらぬ速さで盗んでいく。


 そして誰もが「うまいうまい」言ってる。まあ腹が減ったら戦はできないしな。王である自分がはしたないことはできないが、、これも敵情視察だ。敵を知らないと勝てるものも勝てない。これは王の義務なのだ。


「うまい」


 それを食った瞬間、俺も皆と同じようにそういった。

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