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H282

 俺たち一般兵たちは一斉に銃を発射する。けど……


「隊長! 効いてません!!」

「ええい、撃ち続けろ!!」


 正規の兵士がそんな事言ってる。実際、見てるだけだと効いてるとは思えない。なにせ一瞬だけ氷が貼るけど、それは本当に一瞬だ。すぐに溶けてる。


 森の前で戦ったでかい種はみんなで撃って凍らせることができた。けど、今俺たちが撃ってるのはあの種よりも大きな山というものだ。まあ厳密には、山全体ではなく、マグマから出てるでっかい蛇に向かって……だが。


 でも山全体がマグマに包まれて異様な熱気に包まれてるのもきっと影響があると思う。氷を維持するまでできないんだ。それはいくら重ねがけしても同じだと思えるくらいだ。


 隊長さんは少しでも援護になれば……と思ったんだろうが、俺たちのこの行動はなんの役にも立ってないだろう。

 言うなれば、エネルギーの無駄な消費でしかない。でもそう思ってても俺たちはやめることは出来ない。なぜなら、上の命令だからだ。

 兵士にとって命令は絶対だ。しかも戦場での命令なんてさらに強制力が増す。実際俺自身の立ち位置がどんな所なのかわからないが、こうやって軍に従軍してる時点で正式ではないにしても軍人なわけで、命令違反は最悪銃殺刑だ。

 そんな危険はおかせない。だから指が痺れて感覚がなくなってきても、引き金を引き続けてる。


 その時、不意に空から赤い線がオウラムの街を一閃した。そして直後に爆発が起きて、炎の柱が立ち登る。


「「「うわあああああああああ!?」」」


 元々地震で這いつくばってたからよかったが、その爆風は凄まじかった。自分たちの上を熱気と暴風が吹き抜ける。その時だった。オウラムの街には花が咲き乱れてた。それがさっきの一撃で一緒に吹き荒れた。片目だけ開けてた俺には風に乗って大量の花びらとかが一緒に吹き抜けてくるのが見えてた。


 爆発のせいなのか、その花びらが肌に当たるとやけに熱かった。けどそれだけじゃないような? なんか花が当たる度に服の上からでも、熱が残って、さらに頭に何か聞こえる……ような。


(なんだ……これ?)

「おい! なぜに銃口をこっちに向ける!」


 そんな声が聞こえたと思ったら、バンバン−−と銃声が聞こえた。


「ちが! 違うんだ!! 体が勝手に!!」


 ここの指揮を取ってた人が殺された。それも仲間の手によって……だ。そしてそれが合図だったかのように……


「何やってんだよ!」「違う! 体が勝手に!」「うわあああみんな避けてくれえええ!!」「だめだ、止まらない!!」


 あちこちでそんな声があがってる。


「一体何が……え?」


 こっちに向けられてる銃口に気づく。そして向けてる人もなんでそんな事をやってるかわからないかのような顔をして首を降ってる。


「ちが……違うんだ!」

(ああ、そっか俺はここで……)


 そう思ってると、銃声が響いた。そして倒れたのは俺に銃口を向けてた人だ。


「え?」


 一体どこから? いや誰が助けてくれたんだ? とか思って周囲をみるも、既に周囲に統率ってやつはなくなってた。そしてこっちを見てる人もいない。


「俺……か? 俺が!」


 俺は今ようやく自分が銃口を彼に向けてたのに気づいた。自分の体なのに撃ったことさえ本当にわからなかった。

 彼を殺したのは……俺自身だ。


「うわあああああああああああああ!!」


 俺は地面に向かって慟哭をあげた。

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