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H279

 変化は劇的だった。魔王(と思われる少女)と魔族達の蹂躙の始まりだ。こんなことなら最初から魔族を動かして欲しかったというのはダメなのだろうか?

 俺たちは兵士で兵士はただ上の命令に逆らうしかないってことはわかってるが、ここまで劇的に戦況が変わるのなら、彼らが先にいれば消えなくてよかった命がたくさんあったのでは? と思わなくもない。


 だからだろう−−


「どうして……」


 −−そんな呟きがまさっきに出てしまった。彼らがいれば、マサシは……そんな思いは俺よりも戦場を知ってる先輩方の方が知ってるはずだ。でも周りの人たちはイケイケな感じで喜んでるばかりだ。そこに「もっと早くきてろよ!」的な文句は見えない。


 そして魔族達が作った跡を俺たちは進むことになった。俺たちは荒れ果てた森を進む。その中で、近くの人に俺は聞く。


「どうして……魔族は今頃きたんですか? もっと早くきてくれてたら−−」


 それはきっと誰もが思ってたことだ。誰も言ってないが、仲間を失ってそれを思わないやつはいないだろう。


「それ以上は言うな。それに兵士が戦場で死ぬのは当たり前だ。上にだって考えがあったんだろう」

「そんな……」


 こんな後から魔族を投入することへの利点ってなんだよ? 今までは魔族を前面に押し出して人種はサポートに回ってたと聞いてるぞ。

 でも今回ばかりはなぜか先に人種が先行して戦って、後から魔族がきてる。それで俺たちは追い詰められてしまったわけで……結果的に、人種の脆弱性しか示せてないような気がする。


「文句言っても無駄だぞ。それに余計なことを考えてたら死ぬ。まあどの道、死ぬときは死ぬけどな」


 そういう先輩は前を向いた。俺たち人種は生死の選択権なんてないと言うことか。特に戦場では。


(マサシ、俺もすぐにそっちに行くかもしれない)


 俺は武器を握りしめて前を向く。すでに森の中には敵はいないらしいが、それでも視界の悪い森の中。どこかの見落としが命の危機になるかも知れないから、みんな緊張してる。けどそんな緊張のかいなく、結局そのままオウラムの街まできてしまった。

 そこはなんとも意外というか、花が咲き乱れる街……というか、花に侵食されたかのような街だった。


「これって……こういう街かなのか?」


 俺たち人種の街とは違ってもおかしくないし、こう言うものっていう見方もできる。花が覆ってるのはまさに街だけで、そこに踏み入れる前で魔族達は止まってるみたいだ。でもアンティカは中に入ってるな。機甲師団の姿が見える。


 俺は街の近くにさっき見た魔王と思しき少女の姿を見つけたから、頑張ってその子の声を拾おうと近づいてみた。

 魔族に混じるのは怖かったが、別に何も言ってくるやつはいなかった。

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