H272
「はれ?」
「おい、どこだよここ?」
俺の名前は「ノリオ」だ。将来有望な十七歳の学生だ。そして俺の隣にいるのはいつもつるんでる「マサシ」だ。こいつも同じ歳で学校で気があってつるんでる友人だ。
俺たちは二人でコンビを組んで、色々とヤンチャをしたり試験を乗り越えてきた盟友だ。悪友と言ってもいいが。
「つっ……」
頭が痛いな。俺たちは休日の今日、街に繰り出してかわい子ちゃんをゲットしようと思ってナンパをしてたはずだ。俺たちはそれぞれに彼女がいる。
けど、若いリビドーは一人の女で満足できるものではない。だからこそ街にでて新しいいい女ってやつを探した。そしてとびきりの上玉を見つけたと思ったんだ。そこら辺は覚えてる。
帽子を目深に被った女だったはずだ。声も最高て耳をくすぐってるかのようなそんな柔らかな声だった。手応えは悪くなかったと思うんだが……俺たちはまあ顔もそれなりだ。俺は丸いが太ってるわけじゃない。ただ骨格が丸いんだ。マサシのやつはエラが張った顔してるが、角ばってるのと丸いのでちょうどいい。
それに女は結構筋肉が好きだ。力強い男を好む。だから鍛えてる俺たちは結構受けがいい。アナハイムは安全な場所だが、やっぱりこんな世界だからだろう。守られたい女は多い。だから俺が守れるやつだと思わせられれば女なんて簡単に……
「おい、これって列車の中じゃないか?」
マサシのやつが床に耳を当ててそんなことを行ってくる。まあそんなことをしなくても、この規則的な振動はそうだと思ってたが……でもなぜに俺たちは列車に乗ってるのだろうか? あのとびっきりの美女に声をかけたところで記憶がない。
「まさか俺たち、誘拐されたのか?」
「でもこれってなんか軍用列車じゃないか? 窓もないぞ」
扉は前方に一つある。けど取手とかがない。多分、魔力とかを登録して開け閉めをするタイプだ。最近お披露目されてた民生の列車にはあったか定かじゃないが、少なくとも普通の列車は観光的な目的もあるから、こんな窓もないなんてことはないだろう。
それに内装だっておかしい。もう鉄とか丸出しだし。これはどう考えても質実剛健を謳ってるとしか思えない。そんなの普通に街を走るとか観光で使うとかなったら、こんな面白みもない内装はないだろう。窓もないのは、きっと頑丈さの為なんだろうと推測できるしな。
とりあえず俺たちは扉へと声を出してみる。
「おーい! なんなんだよここは!!」
「そうだ! あけろ!!」
そうやって俺たちは扉をドンドンと叩く。すると扉が無くなって、俺たちは「おっとと−−」と前にたたらを踏んだ。
「ゲッ!?」
そして俺たちは驚愕した。だって前方の車両にはギラギラとした目つきの軍の人たちが椅子に座ってこっちをみてたからだ。
その数はかなり多くて、一つの車両に数十人いそうだが、でも私語なんて一つもなく響くのは列車の駆動音だけだ。
その様子にただごとじゃないとわかる。そして自分たちがとんでもない所にいるとも理解した。




