H264
「はいそこ! もっとしっかり指先まで意識して! ファンはあんたたちの一挙手一投足まで案外見てるわよ!」
「「「はい!!」」」
アナハイムにある大きな建物。この世界では画期的な六階建てくらいの長方形の味気ない建物の内部では、今のように日夜厳しい特訓……いやレッスンが繰り広げられてる。
この国において、一番大きな建物とは、それは城であり、それ以上の建築物なんてありえなかった。まあ権力者がそれを許さなかったというのもあるけど、普通に今の王城もそうだが、単純に技術が失われて再現する術がなかったというのもある。
だからちょっと前まで、人種の国は似たような建物が並び、階数は大体ほぼ、二階建てが限界って感じだった。貴族の屋敷であっても、何とか三階建てで、面積を広くとって、立派に見せてたのだ。
けど今や、アナハイムには縦に長い建物がいくつかある。まあけど、アナハイムにはクリスタルウッドがある関係上、どれだけ高く作っても、クリスタルウッドのせいで、こんなものか――って思うんだけど。
でもこのアイドルスクールはかなり画期的な建物ではある。なにせそれほど広くない土地に六階建てという建物を作ったのだ。アナハイムを事実上の王都とするために、色々と区画整理とかする必要が出てきて、まあどうしてもこれ以上広さが取れないってあるじゃん?
なら上に突き上げるしかないよねって事で、この建物はできてる。
でもせっかくのアイドルスクールだ。このアイドルスクールはこの世界初めてのアイドル育成機関。ここには夢を追って人種の様々な領から少女たちが集まってる。
でもただの長方形の建物では、少女たちの期待感とかワクワクを壊してしまうかもしれない。実際、ちょっと急ピッチで進めたこの建物の外観はそんなに凝ったものではない。
むしろあまりに簡素なせいで、周囲からは浮いてるくらいだ。しかもそんなのが突出して顔出してたら、景観にも影響を与えしまう。
というわけで、色々技術を投入して、この建物の外壁には映像が流れるようになった。ちゃんとこの建物には窓とかついてるが、外から見ると、そんなの見えなくて、奇麗な超巨大な映像が映し出されてる。
今はプリムローズの皆が映ってる。ライブ映像とか、なんかインタビュー形式の映像とかが、切り替わって表示されていくんだ。そしてこれは二十四時間常に表示されてる。
これによってこの建物はどこからみてもアイドルスクールとわかるようになってる。そして映像なんて技術がようやく浸透しだしたこの国で、この超巨大なスクリーンは圧巻で観光名所にもなってる。
これで、田舎から上京してきた女の子たちはきっと「わー、これが都会!!」とかってなるはずだ。
そういう感動を大事にしたいって思ってる。
私はそんなアイドルスクールへと顔を出してる。当然のごとく顔パスなんだけど、幻影魔法が使われてるサングラスのままだととめられるから、こっそりと受付のお姉さんには正体をバラシて入れてもらった。
まあ瑞々しい少女たちが集まる場所だからね。変な輩が狙ってこないように、警備も厳重にしてるのだ。
ふと部屋を見ると、鏡が壁一面に張られてる教室で汗だくになってる少女たちが見えた。うん、夢と希望で満ちた少女たちはキラキラしてるなぁって思った。




