#12
「う……ん」
いつの間にか気を失ってた。やっぱり力を使うとブレーカーが堕ちてしまう。出力をもっと細かくコントロール出来れば良いんだろうけど……難しい。私の性格故なのかな? もっと魔術的な回路を得れば私でも出来るように成る気がするから、この銃の様に魔法的なマジックアイテムを見つけたら積極的に触りに行かないとね。
「うう〰お腹がタプタプする」
水でお腹を満たしたから当然だね。けどお陰で死ぬのは回避できたし結果オーライだよ。けど気を失うのはリスク大きすぎるよね。だって普通に魔物居るし、気を失ってる間は身体固く出来ないからね。
「ん?」
そんかゾクッとした。こんな薄着で雨に打たれ続けたからだろうか? けど少し違った様な? こう……誰かに見られてるような? まあ私って神々しいレベルで輝いてるからね。遠くからでも見てたいのはわかるよ。そんな事を思ってると影が渓谷の壁を移動してる? 敵意は感じないけど、何かが私に興味を持ってるのは確か。
私は雨の中、その影を視界に捉え続ける。するとその影は私を超えて渓谷の先の方の道へと降りた。なにあれ……とうせんぼって事? しばらく雨の向こうの影と睨み合う形になる。微かに識別出来るのは赤く光る目。魔物だろうか? でも魔物なら様子見なんてせずに襲って来るような気もする。一体何なんだ?
「貴様は何者だ!?」
喋った。魔物ではない? そう思ってると向こうから近づいてくる。そしてその正体を私は見破った。
「もの○け姫! もの○け姫だ!!」
白い大きな狼に乗った少女と言えはもの○け姫でしょ! 民族的な仮面もかぶってるし槍もお持ちだ。間違いない。少女は少女だけど私よりは年行ってそう。部分部分の発育がそれを物語ってる。仮面の下の素顔を是非拝みたいものだ。そんな事を思ってると何故か怒って槍を向けてきた。
「うるさいうるさい!! こちらの質問に答えろ! でなければ殺す!!」
かなり物騒な奴のようだ。そもそも本当に獣に育てられたのならこんなものかも。でもそれなら何故に言葉を理解して話せるのか疑問だけどね。ブスリとされたくないしここは素直に話しておこう。
「私はラーゼ。見ての通りの通りすがりの美少女よ」
「は?」
なにその『こいつ頭大丈夫か?』みたいな声。それならこっちもそんなお面して頭大丈夫? と言ってやろうか?
「ふざけてるのか? そもそもこんな場所を貴様みたいな少女が――」
「美・少女」
「――美少女が一人で歩いてるなどありえん!!」
案外良いやつなのかもしれない。てかあっさりと認めてくれたって事は私の美少女っぷりをわかってる? うーんどうなんだろう? 客観的事実として一つの事例が出来たのなら喜ばしいんだけど……お面のせいで表情わかんないからな。
「ねえねえ私って美少女に見える?」
「自分で言っておいて何故そこを確認する?」
呆れられた。確かに自信はある。自信はあるよ。けど、まだ誰にも認められてないんだもん! 不安にもなるというものだ。
「私は私が絶世の美女と信じてるけど、世界が認めようとしないんだもん」
「くっ――はは! なんだそれは? まあ安心しろ。お前はこんな私からみても美少女だよ」
「やった!!」
グッと拳を天に伸ばす。やっぱり私は絶世の美女だったんだ。チヤホヤされる人生も夢ではないな。なんか満足した。
「ありがとう。光明が見えた気がする。それじゃあね」
「ああ、気をつけて――ってちがぁぁぁぁぁぁう!! 止まれ止まれ!」
え? なに? そんなコントしてる場合じゃないんですけど? 彼女は横を通り過ぎようとした私を槍で阻む。雨が強まる中、どうやらこのもの○け姫は私を開放してはくれないようだ。