H207
「何やってるんの! あんたならもっとやれる! てかもうちょっとお互いにボロボロに――」
そこまでいって私はきづいた。確かにオウラムが勝つとは思ってなかった。それは本当に予想外。でもアクトパラスの奴は十分にオウラムを弱らせてくれただろう。そして今から頑張って復興しようとしても、こちら側の到着までにそれが終わりるわけはない。
つまりは次は私たちがここを蹂躙する番……
「――ふふ、ふふふ」
私はクツクツと笑いをこらえる。けどやっぱりちょっと盛れちゃう。だってしょうがないよね。なにせ完璧……ここまで私的に完璧な流れだ。アクトパラスとオウラムで潰しあい、疲弊しきった所で私たちが漁夫の利を得る。それが完璧に実現できてると言っていい。いままでそんなことがこの世界ではなかったのだろうか? とか思っちゃうよね。まあそもそも世界は広く、そしてこの世界情報伝達の手段なんてほぼないし。そもそもが私が現れるまではそんな種族を超えた交流ってなさそうだったもんね。
上位にいる種ほど数も少ないし、その中だけ別に……ね。しかも意思疎通は別に口じゃなくてもそういう奴らはできるし、点在する争いにわざわざ動いて行くのはそれこそ鉄血種くらいしかやってなさそう。そもそもがその争ってる種族間だけで、人知れずに終わった戦いがきっとめっちゃ多いんだろうし。
でもそれに一線を投じたのが私だ。私は情報こそ武器と知ってる。上位の種族達は自分の力に絶対の自信って奴があるから、そんな小細工不要――だとか言って切り捨ててるんだろうが、そんなのは私からみたら奢りでしかないよね。
(でもあれって、アクトパラス側しか出てなかった気がするけど……でも融合したのなら、強さ的にアクトパラスだけしか残ってなくて、ゼンマイの方は……ある意味ご愁傷さまだったのかもね)
私はそんな風に勝手に納得した。
「ラーゼ様、これで良かったのでしょうか?」
「どういうことよ?」
バイセンの奴がなにか怪訝そうな顔でそう言ってくる。良かったも何も計画通りだけど? いや、アクトパラスにはせめてアルス・パレスくらいは壊してほしかったな。全く、役に立たない最強だ。何か最強だよ。目の前で笑ってやりたい。それも今となってはできないが。
「いえ、失礼しました。全てはらーぜ様の手のひらの上でしょう」
「その通りよ」
まあけど、自信満々にそうったが、なんか引っかかる所が有るなら言ってほしい。不安になるじゃん。確かに懸念は有る。そもそもアクトパラスは倒されたように見えたが、世界樹へとそのマナが還ってない。まあ変なマナに成ってたからそのせいかもしれないが、マナの事は後でメルにでも聞けばいいだろう。
そう言えば簡単にアクトパラスとゼンマイの影響力がなくなったのか確かめする術がある。
「バイセン、私を投げなさい」
そう、再び成層圏へといってこの星をみれば、アクトパラスとゼンマイが影響してると思われるマナがどうなったからわかる。あれが消えてれば、多分アクトパラスとゼンマイは消え去ったと見ていい。だから私はもう一度、空へと投げられた。




