H174
「乗り心地悪いわね」
「それはそうです……貴女が乗ってる様な物と比べたら、そうなるのは当たり前でしょう」
私が軍用ダンプの乗り心地に文句を言ってると、バイセンの奴に突っ込まれた。まあ確かにバイセンの言うとおりだよ。私の身の回りの物は、それこそ最上級だ。だって私はエデンの王だし。自然と私の周りに質の悪いものなんて排除されていく。それは当然なのだ。だって私がボロホロの服を着てボロボロのダンプに乗ってたたらどう思うよ? みすぼらしい……とか顔だけかよ……とか思われるじゃん。そして私はエデンの顔なのだ。私が舐められるということは=エデンが舐められるということだ。
だから私は質の悪いものとか使う事がゆるされない。つまりは立場がある者が贅沢をするのは義務なのだ!! まあその贅沢分、義務を果たせばいいだけ。でも私は既得権益にあぐらをかくだけの奴になりたいです。だって責任とか取りたくないし……本音はね。
勿論外面は良くしてる。だからバイセンも私の事をなんかとても高貴で高潔だと勝手に思ってるみたいだし……気分良いんだけど……ちょっと困るよね。
「それは仕方ないだよ。だって私はエデンのトップだからね。まあ軍人はこの程度で音を上げるような訓練はしてないから、これでいいんでしょ。てかよく運転なんて出来るわね?」
よくよく考えたらそれが、意外だった。だってバイセンはツンデレだったじゃん! いや、ツンデレなのは今回発覚したんだけど……今までバイセンは同じ種の奴らよりも、私たちを受け入れてなかった筈なのに……ダンプの運転なんかしてるんだよ? 最初はあまりにも自然だったからスルーしてたけど、よく考えたら衝撃だ。
「私は柔軟ですから」
「なに、体カチコチの奴が言ってんだ」
いやまじで。あっ、待てよ――
「もしかして今のジョークとか?」
――そう言うとバイセンはなんか顔をそらした。どうやら冗談だったらしい。こいつがこんな冗談なんて言うなんて……まあ実際、バイセンをよく知ってるわけじゃない。会ったのも666部隊に随伴を頼んだときと、エデンに最初来た時だけだと思うし。一応報告は受けてたけど、私がそんなの詳細に見るわけないしね。でもなんとなくて問題児的なところがあったのは記憶してる。でも今回の件でなんか随分と心境の変化があったみたい。
「これから戦場に向かうのに、結構余裕そうね」
「そうでもありません。貴女の事は何があっても守らないといけませんし」
「別に、この体はアンティケイドだし、守る必要ないけどね」
この体が使えなくなったら元の体に戻るだけだ。けどバイセンは言うよ。
「守らせてください」
何? そんなに何かをシチュエーションに憧れあるとか? 最近マンガとかも作り始めたからね。もしかしたらそれの影響か? 読んでるかしらないけど。まあけど、守ってくれるなら、それに越した事はないけどね。
「勝手にすればいいわよ。でも目の前で死なないでよ。目覚め悪いから」
「わかりました。やはりらーぜ様はお優しい」
「はい?」
なに言ってるの? 優しくないことを言ったつもりだけど。
「眼の前で死ぬな……つまりは生きろという事。らーぜ様が死ぬことを許されない限り、私は死なぬことを約束しましょう」
うん……なんか酔ってるなこいつ。全然そういう意味じゃなかったんだけど……まあいいや。放置しとくことにした。てかこいつも私の事大好きだな。自分の魅力が恐ろしいよ。




