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H158

 黒い物体はどうやら周囲からマナを吸収してるのか、オウラムの周囲に広がってる深い深い森があれが通ってきただろう部分が枯れ果ててるみたいだった。そしてどうやらオウラムの戦力はあっちに対応してるらしい。なるほど、だから追手が途中から来なかったし、この山の主である彼女も俺たちを放っておいて向かったのか。ここにはこのアンティカがいる。それなら大丈夫と判断したんだろう。実際、流石に今の装備でアンティカをどうにか出来ることは無理だ。

 それにアルス・パレスを破壊するための鍵であったアンティケイドはアンティカによって踏み潰されてしまった。俺たちにはもう手段がない。しかも既に俺ももうひとりもアンティカの手の中だ。その気になれば、今すぐにでも俺たちは肉塊に変わる。なんとか脱出したいが……力でどうこうできるものじゃない。


「あんなものを俺たちが知ってると?」

『タイミングがいいからな』


 確かにタイミングがいいのは認めよう。だが知らん。でもそれを言ったところでこいつは信じるのか? 俺たちは敵同士だ。敵の言葉をそのまま信じるなんてことはしないだろう。


『まあいい、貴様らは所詮はただのコマ。すべてを伝えられているわけではないだろうからな』

「わかってるなら、そんな質問をする――ぐあああ!?」


 握られた体がミシミシという。実際ミシミシといってるのかはわからないが、体が悲鳴を上げてるのは確かだ。


『貴様らをここで殺すのは簡単だ。だが……どうせだ。手を煩わせた報いを受けさせてやろう』

「なに……を……」


 力が少し抜けてさっきの痛みは和らいだ。だが、開放する気はないらしい。くっ……俺ともうひとりを捕まえて、こいつは完全に油断してる。サポの存在に気づいてないのは明らかだ。この間に、サポにはこのアルス・パレスの中枢を探してもらってる。なにかが出来るかはわからない。だが、アルス・パレスはきっと大量のマナで動いてるのは確実だ。そのマナをそれこそ暴走とかできたら、アルス・パレスを壊せるか……一時的にでも機能を停止するくらいは出来るかもしれない。

 それで俺たちの命を使うしかない。そう俺たちはこいつが言ったとおり、ただの駒だ。人種の国を支える一つの駒に過ぎない。そんなのは百も承知。だが、今はあの平和を形作ってる一つだという自負はある。良くなっていく世界が見れるのなら……こんな役割でもいいと思える。だからこそ……何をやらされるかわからないが、それまでせいぜい生き延びようじゃないか。そう思ってると、アルス・パレスが火口から出る。でも俺たちはアルス・パレスでも内部にいる。外感はなかった。だが戦闘音みたいなものは聞こえてくる。

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