#11
数日が過ぎた。結構歩いたと思う。森を出で渓谷に来た。大きな山と山の間。なんでこんな山を歩いてるかと言うと、山を超えた向こう側にかなり大きな都市があるらしいからだった。だって村から町、更に都市なんてそんな段階踏ん出られない。だってさっさとこの大陸から出たいんだもん。とまぁ思ってたんだけど……
「し……死ぬ」
私は満身創痍だった。何故かって? それは勿論、お腹が減ってるからだよ! あの緑の野郎ども、あんなちょっとで足りるわけ無いじゃん!! それにあのカラス……アイツが乗せてくれさえすれば……そんな事を思いながらも前を目指してた訳だけど……
「もう駄目……」
限界でした。ドシャッと地面に倒れる。美少女もこれじゃあ形無しだよ。雨でも降ってくれれはまだなんとかなるんだけど……ちなみに水は竹筒二つくらい落として駄目にしました。自分の不注意が憎らしい。最初はそれでも何とかなる……とか思ったんだけど舐めてました。水の大事さを知ったときには既に遅かった。後はもうカラスの羽しか無い。あれ使いみちわかんないんだよ。
何故か死にそうなのに私の身体は瑞々しい……唇とか水分なくなってたらカサカサになりそうなものだけど、プルプルしてる。てか髪もボサボサではあるけど瑞々しくはある。不思議だなーとかおもいつつ自分の髪を手繰り寄せる。そしてサラサラフワフワの髪を感じて私はまだ美少女だって言い聞かせる。それが私の存在意義だもん。そう思ってれば力が湧く……気がしなくもない。
「わたしーが、しぬのーは……じんるいーの、そうーしーつ!」
そんな声を上げながら少しずつ進む。私が幾ら美少女と叫んでもそれは私の主観でしかしないんだ。だから私という美少女がこの世界に存在した証は実際まだない。一度も認められずに死んだら、つまりは私はこの世界に存在しなかったと同義なんだ。それは嫌だ。だからこそ、まだ進む。どれだけ泥だらけになってもだ。けどそれも直ぐに限界がくる。限界から更に力を絞ってたんだから当然。
意志はある……けど身体が動かない。ガソリンが切れた車の如くだよ。もっとゼルラグドーラの力を自由に使えればそれこそ楽なんだけど……それが出来ればこんな苦労はしてないよね。でももう手が無いのも事実。このままだと確実に死ぬ。使うしか無い……禁断の力を。成るべく身体を傷つけずに力を使うとなれば銃しか無い。
(そういえばカラス戦の時、この銃から鎖出てたよね?)
それってつまりは自分次第でなんでも打ち出せるってことじゃないかな? でも私ができる? 力のコントロールなんて全然出来ないんだよね。でもカラス戦の時も何とかなったし、この銃を信じよう。私は仰向けに態勢を変えて銃を空へと向ける。難しいことなんか何もわからない。何をどうすれば雨を降らせられるのかもサッパリ……現代の知識なんて役に立つことなんかほぼ知らない。
だから私はただ願って引き金を引く。
「お願い……雨を振らせて!」
再び銃口から魔法陣が作られる。そして昇った光は空へと広がって行った。少しすると黒い雲とゴロゴロという音が聞こえてくる。そして眩しい光と共に降り出す激しい雨。
「あはっあはははははははははははは!!」
そんな笑いが出ても仕方ないよね。だってできちゃったんだもん。なんだってやってみるものだ。私は降ってくる雨を喉を鳴らして飲みまくる。