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H119

「気をつけ……ろ。アレの中にはとても強い存在が……いた」


 パウジーフラワーの一人がそんな事をいってくる。どこから声を発してるのかはわからないが、きっとマナを操った所業だろう。とりあえず詳しく聞くか。そして聞くにどうやら、それは魔王……らしい事がわかった。でも追われてる時には見かけてないらしい。彼等の住処では確実に魔王らしき奴がいたとか。


「魔王が出張って来てるとなると……下手に藪はつけないぞ」


 魔王という存在は種族事に捉え方が違うようだ。それこそ厄災的な物から、マナの浄化者みたいな事を伝えられてる種もある。セーファ的には「あれは美味い」らしい。上位種は魔王はちょっとした食事感覚? 過去に出てきた魔王は、上位種のどれかが力を得るためにこぞって喰らうのだとか。案外哀れだった魔王。でもまあ世界に及ぼす影響が小さいわけではない。


 そこら辺の認識の違いは多分、純粋な力の差だ。格が高い種はそれこそ魔王を脅威とは見てなかったってだけだろう。でも今回の魔王はセーファから見ても、今までは違うらしい。


「今回の魔王は完全体だ。それに魔王は種を喰らうほどに力を増す。そして世界樹も得てる。世界を喰らう魔王は既に完成してるやもしれない」

「そうなると、お前でも危ないのか?」

「魔王が真に完成してるとなると、その特性を打ち消す位は出来るからな」

「それって、お前が炎になれるとかそういうものをか?」

「そう言う事だな」


 むむ……セーファとか幻獣にカテゴライズされる種は自身まで変質して世界に干渉為うる。それが強力なんだが、どうやら完成した魔王にはそれに対抗しうる術があるみたいだ。


「完成した魔王は一度も誕生した事がなかった。だからどこまでなのかはわからないな」

「流石に本隊を送り出す訳にはいかないしな……」

「魔王なら、そもそも魔族を率いて派手に来そうだがな。逃げる意味もわからない」

「それはそうか……」


 パウジーフラワーの人達は追われてる時は魔王をみてないらしい。そもそもが魔王がまだ居たら、ここまでたどり着くなんて事は無い。でも確実にパウジーフラワーの巣にはいたわけで……


「魔王の目的はなんだったんだ?」

「さあな、だが魔王は種の特性を食らえる。パウジーフラワーを喰らいに来たんじゃないか?」

「ならそれを得たから魔王は帰ったのか……」


 パウジーフラワーも全員が無事だった訳じゃない。魔王に喰われた奴もいるだろう。彼等には悪いが、まだ流石に魔王とぶつかるのはまずい。それに俺達は出来れば最後に、アクトパラス種とラーゼ達をぶつからせて、どっちも疲弊してる所を横から殴る……卑怯だが、俺にはオウラムを背負う責任がある。幾ら力を得ようと、慢心なんて出来ない世界だ。

 なら……確実に勝てる場を整える必要がある。ただの獣人だった時の様にはいかない。誇りだけを胸に抱いていた、ただ若い時の俺ではもう無いんだ。とりあえず最悪の場合を想定しつつ、ダンプを追いつめていく事にする。

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