#109
皆が凄く荒れている。絶望と焦燥……そして溢れ出る怒り。それが見える。
「なんと野蛮な……」
「そう言いたくなる光景だけど、あれも私を思っての事だから……」
「我等と同じ――ということですか」
「そういうことよ」
メルは荒れ果てた皆を見る目を変えたようだ。さてさて、さっさと出ないと、森がどんどん伐採されちゃうね。幾つか切り開く事は必要だとは思うけど、あんまり無計画にするのは好ましくない。けど蛇たちは本能のままにその力を振るってる。はっきり言って近づくのも結構危険そう。しょうがない。私は目を閉じて集中する。そして沢山別れた枝を掴んで、『止まれ!!』と唱える。
その瞬間、蛇たちは頭を打たれた様な衝撃が来たはずだ。なにせ、私の力が流れてるピアスを通して思念波をぶつけたからね。脳に近い所にあるから、別段力を使わなくても、思いくらいはぶつけれるのだ。あんまり使わないけどね。でもこういう時は中々に使える。よろめいてる蛇たちの元へと、私を抱えるメルが進む。
「ラーゼ?」
「うん。どう気分は?」
「最悪ですよ」
でしょうね。いまでも頭抑えてるし。それに自分が居て、私を守れなかったことが蛇的には堪えてるみたい。まあそこは、ほら、自分の中で折り合いつけてもらうしかない。私が何か言っても自分を責めるだろうしね。
「とりあえず私は無事。それとこの娘はメル。この森にとても詳しい存在だから、これからの為にも連れてきた。大丈夫、この森はちゃんと私の物だからね。だからこれ以上壊すの禁止」
「よくわからないのですが?」
「私もアンタがフル勃起なのよくわからないんだけど?」
グルダフの奴はパンツ一丁でフル勃起とかもう完全に変態じゃん。変態以外の何者でもないよね? パンツ一丁でも外歩いてると変態チックなのに、フル勃起とかもう言い訳出来ないレベルだよ。まあグルダフは獣寄りの獣人だから、パンツ一丁といっても毛があるからそれほど裸感は実はない。けどフル勃起は隠せないから駄目だね。そもそもグルダフのナニは巨大だし、隠しようがないよね。
「こ……これはですね……なんといいますか……その、戦闘で高まった故というか……なんというか……」
すっげー歯切り悪い事いってるね。てかさっき助けに来た時も既にボッキボキだったような? いや、そこまで見てなかったな。まあどっちみち、戦闘でそんななるとか、ヤバイ奴に変わりないけどね。
「何言ってる? 君のソレははじめか――」
「あっはっはっは! 俺たち友達だよな!?」
何やら言いかけたカタヤに組み付き熱い抱擁を交わすグルダフ。まさかそんなに仲良くなってたとは。腐った女子が居たらムフフな光景だよそれ。まあ私は腐ってないから、友情以上なんて見方しないけどね。てかカタヤぐったりしてない? まあカタヤだしいっか。
「とりあえず問題は片付いたと思って良いのですか?」
「うん、この森の事はメルに詳しく聞いて。きっと魔光石の事も教えてくれる。てな訳で一回撤収!」
そんな私の掛け声で皆で森の出口に向かう。メルを先頭にする必要もない。なにせ蛇たちがメチャクチャにして進んで来たからだ。私は相も変わらずメルの腕の中。だって足場悪すぎてあるきたくないじゃん。屋敷に戻る途中、凄く注目された。まあメルデカイからね。そして問題にぶち当たった。メルがデカすぎて屋敷に入れないよ。