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H103

「どういう事?」


 私はこの違和感を素直にラーゼに聞いた。だってここはクリスタルウッドの中だ。クリスタルウッドはこの星の全てのマナの源で、星の循環装置。全てのマナはここから放たれて、そしてまたこの中へと戻ってくる。だから常に、そしてどこまでもこの中ではマナが流れてる筈なんだ。てかそうでないと困る。


 もしもクリスタルウッドの中にマナが溢れて無いとなったら、それは世界の、星の終わりが近いって事だと思う。だからこれは結構異常な事だと思うんだけど……


「心配しなくていいよ。ただ、マナを消滅させる事が出来る様になっただけ」

「消滅って……なんで?」


 必要なくない? だってこの星の誰の力だって、クリスタルウッドに帰ればそれはラーゼの力だ。確かにまだ敵は居て、そして残った敵は手強いだろう。そいつらを倒すには確かに役に立つ事だとは思うけど……


「その消滅って、完全に消滅するの?」

「あんた自身が感じたんじゃない?」


 私の疑問に、私が感じた事が全てだと……ラーゼは言う。このクリスタルウッドの中で一部分でもマナを全く感じないってのはつまりはそう言う事。実は消滅したように見せかけて、ここに戻ってる……ってのはこの外では起こりえる事だと思う。


 でも、ここではない。だってここに集まってくるんだもん。つまりはクリスタルウッドの中で完全に消えてしまった力がある……ということ。


「マナって増えるの? その、個体のマナの容量じゃなく、世界の容量的なの……」

「増えてるよ。当たり前じゃん。すり減らない物ってないんだよ? 生み出され続けないと、どんな物でもその内減っていく。でも幸いな事に、この世界ではまだ減少には至ってないね。命の循環が上手く出来てるんだよ」

「命の循環って……世界に流して、そして回収するだけじゃないの?」


 私はそう思ってた。マナとは命。全ての生命の源。それらがここから送り出されて、そして命を育み最後にはまたここに戻ってくる。そうやって世界は、星は回ってるって。でもよくよく考えたら、マナの総量が変わらないのであれば、広がっていく……私達自体の数が増えて行くってこともないよね。


 私達人種は今、順調に増えている。まあそもそもがまだまだこのクリスタルウッドのマナの総量に余裕があった……とかいう見方も出来るけど、世界が育つって事はマナも増えてるってことなのかも?


「どうして人種がこの程度なのか、私は既に気付いてるよキララ」

「どういう事?」


 何やら、ラーゼの奴が意味深にそう言ってきた。私とラーゼの周りにはマナはなく、ただ暗闇があって……でもラーゼだけは光ってる様に見える。多分内のマナがそう見せてるんだと思う。そんなラーゼが私を指さす。人種である私を。


「命の循環に一番適してるのがなにを隠そう人種なんだよね。人種は弱い。けどしぶとくて、増えやすい。どこで立って生きる執念と、知識を蓄える頭がある。それに何よりも寿命も短いしね。弱いからふとした事故でも死ぬし。

 マナはねキララ。宿った人物が死んだときに回収されるけど、それまでにその人の行動や努力によって増えるんだよ。マナを増やすことが出来るのは、マナを宿した生命だけなの」

「ふーん、でもそれなら上位種の方が強大じゃない?」

「あいつら死なないじゃん。数も少ないし……そもそもが初めから強い奴は完成してるからね。完成してるって事は伸びしろ的にはあんまり無い。人種は未完成で、いつだって命の危険がある。戦うのも、他種族だけじゃなく、世界と戦ってる。そういう生き様? 的な奴がマナを増やすんだよ

 命の輝きがマナを増やす。命が輝くときは生にしがみつく時じゃない? それか大切な人を守る時とか、落ち込んだ時に、もう一度立ち上がろうとするときとかね。そういうの人種にはいっぱいあるでしょ」

「なる……ほど」


 私達、人種の歴史は悲惨だ。なにせ弱い私達はずっと逃げ回ってきた歴史がある。何も知らなかった私だけど、今はそういう事だって知ってる。学んだんだ。弱いと罵られてきて、世界に見放された種なんか言われてきた私達人種だったけど……でも本当は違った。私達こそが実は世界を支える一翼を担ってた。そんな事実を暴露されて……私は一体どう反応すればいいの? まあけど、ちょっと誇りは出てきたけどね。

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