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H100

「ラキア……」


 私はそう言ってゆりかごの中の我が子の頭をそっと撫でる。ラキアは夫の髪質を受け継いで、とても輝かしい金髪をしてる。でも勿論、カタヤだけの特徴を受け継いでる訳じゃない。私の特徴だって……多分ある。どうやら私の血は薄いらしい。でもおかげで、この子はとても綺麗になると思う。勿論ラーゼほどには無理だろうけど、でも私的にはラーゼよりもラキアの方が可愛い。

 ラーゼには親馬鹿って言われるけど、親くらい子供にバカになってあげなくてどうするのか……というか、私の子ってだけで愛おしい。だってまさか……まさか私が誰かの親となれるなんて……いや、今や私はこの人種の国の王妃だ。人種の頂点の一人……そんな私が実は昔は奴隷よりも下に居たなんて、誰が信じてるだろうか? 


 私だって昔のことを夢か何かだったのかと思うときがある。でもそうじゃない。あれは現実だった。今やあんな事を経験する可能性は低いけど……でもこの世界では戦いはなくならない。


「ラキアが大きくなる頃にはきっと平和に……」


 私は愛おしいまなざしを向けながらそう呟く。この世界が今のまではこの子が安心して生きられる未来にはならない。何故なら、世界は戦いを望んでるから。種族は滅んだり、組入ったりして、大きく再編されて主要なのは三つになった。

 私的には、三つ巴と成って牽制しつつ、平和が訪れれば良いのに……と思ってる。実際、今はとても平和だ。それも相まってとても発展しつつある。魔術は発達して色々な物が開発されて、生活もそれによってとても楽になってる。


 ちょっと前まで、人種は一定の水準の地位の人達以外はそれこそ明日食べるものにも困ってた。でも今はそんな事はなくなった。誰もがお腹いっぱい食べられる国へとなった。それなのに、別の種族を虐げてる……なんて事もない。最初は古くからいる貴族がラーゼを頼ってくる他種族をそれこそ奴隷の様にしようとか言ってたけど、そんなのは認めなかった。それぞれの種族を受け入れて、友好的になり、彼等の知識……そして技術を取り入れる。


 それはとても有用だった。実際、技術ならエデンから下ろされてくる物でも充分過ぎたけど、それは数千年も前の物でもある。年月の詰み重なりでそれぞれの種族にも変わった物とか合ったし、それで新たに作れるものとか色々とあったと聞く。


 私ははっきりと言うと、この国は別段好きじゃない。王妃がそんな事を想ってるなんて大問題だろう。でもしょうが無い。だって私にはそんなに良い思いでないし。ラーゼに出会うまでなんて、希望なんて物はなかった。


「ラキアは寝てしまったか」


 そう言って部屋に入ってきたのは夫であるカタヤ様だ。私達は二人で愛娘を見つめて、ふと目が合う。妊娠してたからそう言う事はご無沙汰だった。けど、私達はこの国を背負ってる二人。そしてそういう者には子供を沢山作る責任がある。

 だから私はこてんと頭をカタヤ様の方へと倒す。すると撫で撫でしてくれる。顔を上げると見つめ合う事ができる。次第に顔が近付いてくる。私もつま先立ちになってちょっとでも近寄る。そしてあと少しで二人の唇が重なり合おうかと私は目を閉じた。


(ん?)


 なんか長い。いつまでも唇はスカスカだ。それになんか匂いも部屋の匂いじゃない。


「いつまでもアホな面してるのよキララ?」

「ラーゼ! なんで!?」

「ちょっと様があったから呼んだ」

「あんたねえ!!」


 あとちょっと! あとちょっとでキスで、今夜はきっと激しく愛し合えたのに!! 私はラーゼに向かって憤慨するよ。

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