H90
繭からは緑色のどろっとした液体以外に何もないようだ。と言うことはあれがゼンマイ種とアクトパラス種のなれの果て? もしかして融合とかを試みてたとか? 繭なら確かになんかなり得そうな気もするけど……でもその途中で私が邪魔したから、あんなドロドロの状態のまま、外に出ることになってたのだろうか?
それは悪い事をしたと思う。でもこれはしめしめって感じでもあるよね。なにせこの世界には敵ばっかなんだよ? 繭なんて無防備な状態でいたらね……それは狙われるよ。私は悪くないね。無防備だったこいつらがわるい。
「もしかしてあの化け物は護衛だった?」
あのマナを消失させる化け物はやっぱりゼンマイ種とアクトパラス種の先兵だったのだろうか? 他にアレと同じような個体は居なかったしね。その可能性はあるかも。あれを配置させたから安心……と思ってた可能性はある。
なにせマナを消失させるあれに勝てそうなのって私かミリアくらいだ。それか本当にもう物量をぶつけるか……だね。私も殆ど一人で物量をぶつけた様なものだし、集団でそれが出来れば、もしかしたらあの化け物を攻略することは出来るかも知れ無い。
まあけど、いくら自信があったとしても、たったの一体に命運を預けるのはどうかと思う。
「その過信が、この結果なのよ」
私は地面に零れた緑の液体を見てそう呟く。するとその時だ。緑の液体の表面に幾重もの陣が浮かんだ。そしてそれはバチバチとスパークしだす。
「なに!? 生きてるの?」
まあ上位種がこのくらいで死んでる……なんて思う方が侮りかもしれないか。でもドロドロだよ? 私はアンティケイド達ととりあえずこのどろっとした液体から離れる。魔方陣が現れる度に空は曇り、雷が落ちてるようだった。でも不思議な事に雨とかは降らない。代わりに不吉な風が私達の肌を撫でる。
雷はどうやら直接あの液体に落ちてるらしい。何をやってるのか理解できない。でもその度に、あの緑色だった液体が黒ずんでるのはわかる。炭化してるんじゃない? まさか自滅? 意思とかないんじゃない? でも同時に大きくもなっていってた。最初は地面に平べったく広がってた筈なのに、今や何十発と雷をくらって元々繭があった所まで膨らんでる。私達も大きくなってくる度に距離を取った。
「ヤバいわね」
あいつ、表面積が増える度にその体表にあらわれる魔方陣が増え続けてる。今や同時に数百……いや、数千の魔法を一度に発動してる様なものだ。そのせいで地形が変わりだしてる。
「た、退却! たいきゃーーーく!!」
私はそう言って、アンティケイド達を集めて観察を止めて距離を取ることに専念し出す。けど、そうしたらなんて、あの黒くなった液体とも言えない何が宙にういた。なんかぶよぶよとしたエデンみたいなった。そしてそれは魔法をまき散らしながら、なぜか私達を追ってくる。
「ひいいいい! まさか私が穴開けたのわかってる!?」
その可能性が高いね。空飛んでるのズルいんですけど!!




