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#106

「では行くぞ」


 そう言ってネジマキ博士が一欠片の魔光石を変な装置に投入する。それはステンレス製の水筒みたいな縦長な形してる。まあ光が漏れる様な窓が幾つかあるんだけど……蓋を締めて、何やら蓋の天面部分を押すと、その窓から光が漏れ始めた。しかもかなりの光で目を開けてられないくらいだった。

 

「おおおおお!! これは――」


 驚愕に悶えるネジマキ博士。これはかなりの好感触……と思った時、一気にその光が消えてなくなった。

 

「ぬお!?」


 何度か博士は天面部分を押すがそれからはうんともすんともしなかった。しょうがないからもう一欠片投入してみる。すると再び――

 

「うおおおおおおおお! 今度も凄い――あれ?」


 いきなりポスッとスカした音と共に光は失われた。それから三回位手近な魔光石を試してみたが、どうやら全部同じのようだ。最初は凄い光を放ち、それが数秒でなくなる。えっと……これはどうなの? ネジマキ博士の見解を待つ。

 

「ふむ……恐らくここの魔光石は恐ろしく魔力伝導率が高いんじゃろう。内包しとるエネルギーもかなりの物じゃ」

「それじゃあ!」


 私はパァッと顔を輝かせる。けど「しかし」とネジマキ博士の言葉が聞こえてきた。

 

「しかしじゃ、余りにも高い魔力伝導率のせいでそのエネルギーを消費するのも一瞬。これでは幾らかき集めてもエネルギーが直ぐに付きてしまうじゃろう。内包するエネルギーは重要じゃが、それをいかに長く持続させるかも魔光石の価値の一つじゃからな。魔光石は基本消耗品じゃ。これではまともな業者は買い取らんだろう」

「そ……そんな」


 ガガーンと言う音が頭に響いてる。だって宝の山だと思ってたのが、一転してゴミになったんだよ。こんなのってないよ!! てかなんかここの魔光石達は私に似てない? 一度に全力を出して全部出しきっちゃうんでしょ? それはさながら、一発打ったら倒れる私みたいじゃん。製作者の特性を受け継いだとか……そういうこと? 

 ごめんね。私のせいで駄目な子にさせてしまって。

 

「まあ普通でまともな業者は買い取らんと言うだけじゃがな」

「え?」


 ネジマキ博士はまじまじと魔光石を覗き込んでる。そしてなにか「うむ」とか言ってる。

 

「儂なら、これを有効活用出来る。一瞬で無くなると言ってもその出力は高い。しかも純度もかなりの物じゃ。これを安定的に供給できると言うのなら、いい値をだそうではないか」

「ほんと!? はした金で買い叩いたらアンティカ壊しに行くから!」

「それは脅迫じゃぞ!!」


 むむーだってそれなりのお金で買ってくれないと贅沢楽ちんな生活が出来ないじゃん。今の所、収入源はこれだけなんだよ。細々した特産品はあるらしいけど、それは集落の人達が偶にちょっと贅沢したりする分くらいしか儲からないらしい。そんなの意味はない。

 

「安心せい。お主相手に駆け引きする気もない。儂はまだ死にたくないのでな」

「別に殺しはしないわよ。私は本人よりも、その人の大切な人を殺す」

「より質悪いわ!?」


 効果的だと思うんだけどな。自己犠牲精神持ち合わせた奴でもそれは効くでしょ。なんか人種の皆さん引いてるね。蛇とかはうんうん唸ってるけど。私やばい奴とか思われてるかもしれない。

 

「とりあえずは安定して供給できるかじゃ。そうでないと話にならん」

「それもそっか。でもそこらに一杯あるし大丈夫じゃない?」


 そうなんだよね。ハッキリ言ってもうそこらじゅうに魔光石があると言ってもこの森は過言ではない。だって岩とかは当たり前として、なんか木からもニョキニョキと側面とかから魔光石が生えてる。こんな事普通はないらしい。しかも足元に咲いてる花……これも魔光石の花らしい。いうなら魔光花だね。なんか私のせいで生態系というかこの土地事態がおかしくなったみたい。

 

「じゃが言った通り魔光石は消耗品じゃ。表面に見えてるだけでは直ぐになくなるぞ。ここの魔光石はただでさえ消費が他とは比にならんのじゃからな。安定して供給出来ると証明せんかぎりは契約など出来ぬ」

「うむむ……」


 博士の言葉が正論過ぎて食いかかる余地がない。けど、このままじゃ今日も不味い飯。いや、実際お金はあるからちょっと首都までいって高級料理のデリバリーでも頼めばいいだけだ。デリバリーしてるかは知らない。でもそれもいつまでも出来る程あるわけじゃない。だから早急に金はほしい。

 

「とりあえずここにある分だけでも買い取ってみない?」

「ただなら貰ってやろう」

「さっき私相手に駆け引きしないとか言ってなかった? この爺? なにタダって? タダより高いの無いって教えてやろっか? 主にその身体に」


 私は髪の毛を自身のマナで揺らめかせながらネジマキ博士に近づく。すると博士は尻もち突いて後ずさった。そして私と博士の間にカタヤの奴が入ってくる。しかもその手が腰の剣に掛けられてる。

 

「なにやる気?」

「博士を傷つけるのなら、それもやむ無しだ」


 睨み合う私達。その威圧感に亜子とか普通の人達は立てなくなっいく。そんな一触即発の中、ネジマキ博士が理由を言った。

 

「もっと詳しく調べる為にもある程度の量が必要なんじゃ。それで更に使い道があるとわかれば、少量でもどうにか出来るかもしれん」

「……ふーん、ならそういってよ」


 私はカタヤから視線を外して手近な木に生ってる魔光石に近づく。タダは痛い。けど、将来への投資と思う他ないか。こんなに綺麗なんだし、魔力を使い切った後も加工して装飾品にしたら売れるかもしれない。そんな事を考えてると、ガサッという音が木の上からした。その瞬間私の視界が回る。

 

「きゃあああああああああんみゃ!?」


 気付いたら私は蛇の腕の中にいた。一体何が? 蛇の視線を追うと、さっきまで私が居た所に、なにやらテカテカした姿の変な奴が居た。蜂の様な大きな目に、蟻の様な口。頭には触覚めいた物がみえる。手足は細長く、その先端は三本くらいの指がある。身体は引き締まってるというか寸胴で、背中はなんか丸い。はっきりいってきもい。

 

「なにあれ?」


 私は思わずそう言ったが、それに答えてくれる者はいない。まさか……新種? そう思ってると、更に衝撃的な事をそれはやった。なんと私が見てた魔光石をもぎとってかじったんだ。普通はそんな事したら歯がやられる。けど、それはバリボリと魔光石を噛み砕いてる。

 

「食ってる……」


 誰かがそういった。そして私は思わず言ったよ。


「ちょっと! それは私の何だからね!! 誰が食べていいって言ったのよ!」


 するとピタッとそれは止まった。おっ、言葉わかる? とか思ったのもつかの間、そいつはその魔光石さえも砕く口を使って得も言えない様な珍妙な音を出し始めた。なんだか方向感覚が狂うような音。そう思ってると、森の奥から無数の光が見えた。

 

「これ不味い?」

「そうかも知れ無いですね」


 そう言って私を下ろした蛇が武器を手に前に出る。カタヤもそれに続いてく。カメレオンは多分どっかにいるだろう。さっき私を助けたのはカメレオンの筈。後は蛇の従者の獣人達が数人武器を構える。けど……それを圧倒するほどの敵が既に私達の視界には入ってた。

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