表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1037/2422

H64

『もしかしたら、パウジーフラワーが森に広がったのは、あれではないですか?』

「あれ?」

『炎の上です』


 サポの言葉に見上げようにも、穴の近くではちょっと無理そうだ。だから俺はさがってみる。すると確かに見えてきた物があった。これだけの炎の柱だ。火の粉なんて物も当然に周囲に舞ってる。だから気付きにくかったのかも知れない。そんな火の粉に混じって、何やら空を飛んでるものがある。


「胞子か?」

「いや、でもボス、あんな炎の近くだぞ。燃え尽きるだろう?」

「普通はな……普通はそうだが、パウジーフラワー共は実は炎に耐性があったのかも知れない」


 俺達はパウジーフラワーという名前、そして植物の姿を見て、炎が有効だと判断した。そして実際、炎で倒せた様にも見えた。それに周囲の花畑を焼き払うにのにも炎が最適解だと思ってる。でも……だ。でももしも……それらは全て、パウジーフラワーによって誘導されてたとしたら? そもそもあいつらは寄生する物はなんでもいい……筈だ。最初俺達が仕掛ける前の姿はそれこそ、色々な素材をつぎはぎしたような姿をしてた。


「もしかしたら、あの頭に出てくる花もダメ~なんて事も……」


 そもそもがこれ見よがしに、花を一輪出してるのって、今にして思えばおかしくないか? 普通、弱点を進んで晒す生物がいるだろうか? 普通はそんな生き物はいない。弱点とは極力みせない物だからだ。なにせ自然界に卑怯なんて言葉はないだろう。野生では生き残るためには相手の弱点を狙うのは当然の行い。弱点を狙うのは卑怯ではなく、弱点を晒している奴が間抜けなのだ。

 でもだからこそ、パウジーフラワーが無闇に弱点を晒してるのが、今更ながらにおかしい気がしてきた。そういう種だと情報を与えられて、俺達は決めつけてたんではないか? 目の前で観た物で情報というのは随時更新していく。そういう柔軟さが俺達には必要な筈だ。


(油断……慢心があったか? いや、有ったな)


 俺はリリアを見てそう思う。なにせリリアは魔王だ。魔王というとびっきりの戦力を得て「これはもう勝ったなガハハ!!」と思ってなかったと言えば嘘になる。確かに森に入ったときはめっちゃ焦ったが、なんやかんやで、あの大襲撃も乗り越えることが出来た。それもこれもリリアのおかげだ。リリアがいれば、大抵なんとかなると思えるし、実際の所なんとかなる。なにせリリアのおかけで俺達はバンセンさんを温存できた。


「サポ、お前は同じようなことが出来るか?」

『マナが豊富なら出来ますね』


 サポは花粉種とかいうやつだったな。ならパウジーフラワーと親戚みたいな物では? まあそんな事を言ったら怒りそうだから言わないが、どうやら、植物系の種でも、炎に耐える術は複数あるみたいだ。マナか……人種にはその一段階さがった魔力とかではないと使えないからな。それを感じるって事は出来ない。


「もしかしたら、パウジーフラワーはリリアの事を感じた時には、既に逃げる算段をしてたのかもしれないな」


 今にして思えば、パウジーフラワーの行動はなかなかに不自然な事が多かった気がする。そこまで反撃してこなかった……とは言わないが、勝利を目指してた様には感じなかった。リリアとは、魔王とは圧倒的な存在だ。そんな存在が襲ってきたら、どうするのか……当然逃げる。それを考えると、パウジーフラワーの行動は至極まっとうなんだ。クソッ、まともな思考しやがって……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ