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H62

「全員、まだ気を抜くなよ」


 俺はそう言って部隊に発破を掛ける。確かにほぼ完璧にパウジーフラワーは倒したと言っていい。でもまだリリアも警戒してる。なら俺達もまだ気を緩めるわけにはいかない。確実にパウジーフラワーが死に絶えたと判断できるまでは……


「リリア、どうなんだ?」

「順調ですよ。流石にあの炎の中ではですね、パウジーフラワーもひとたまりもないでしょう」

「それならいいが……」


 確かに穴の中は凄い炎の渦が出来上がってる。ちょっとなかを覗き込もうとしたら、リリアに後ろに引かれた。その瞬間、炎の柱が渦を巻いて吹き出してきた。ヤバい規模になってる。炎の勢いはますます激しさを増してるみたいだ。だが……


「流石に激しすぎないか? ここまでの事になる……か?」

「それはわかりませんね。でも……確実に力は弱まってますが?」


 既に穴を見ることも出来ないくらいに炎は成長してる。穴の中には湖もあったはずだ。なのにこんな……ここまで炎がおおきくなるか? と言う疑問がある。でも実際炎は高く登ってる訳で……自然現象、なんだよな? リリアが言うにはちゃんとパウジーフラワーの力は弱まってるらしいから、この炎にパウジーフラワーが関わってるっていう可能性は低い……か。そもそもパウジーフラワーは植物系の種だった。だから炎を操るなんて事は無理……か? 多分だけど。そもそもパウジーフラワーとは一体何だったのかよくわかってないが。寄生するタイプの種で、パウジーフラワーという種自体にはそこまでの力もなかったのかもしれない。

 だがあの寄生の力は多分相当な物。それこそ操れない物なんてないってくらいに。でも流石に炎なんて物には寄生できないはずだ。なにせ実態がない。実態がないものを操るなんてそんなこと……


『何か聞こえます』

「なにかって何だサポ?」

『わかりませんが、聞こえませんか魔王?』

「チャンネルが違うのかも」


 そう言ってリリアは頭をトントンと指で叩く。俺も角があるし、マナのチャンネル? に合わせられたりしないのだろうか? 流石にそこまで魔力を操作するとか出来ないか。元々人種のマナは脆弱だ。感知する位ならもしかして……と思うが、流石に今すぐに出来る様な事ではない。


「確かに何か聞こえる」


 そう呟くリリア。俺は「どこからだ?」と言う。けど大体、辺りはつく。そう思ってこの高く伸びた炎を見る。やはりイヤな予感があたったか? 


「どこからって言われると……そうですね。この森全体からでしょうか」

「は?」


 それは予想外の返答だった。

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