H52
ずうううううん――と最後に残ってたパウジーフラワーが地面に倒れる。それに伴って皆がその姿を現していく。一応植物が寄り集まったような建物も確認したが、他にパウジーフラワーはいなかった。子供の様な小さな奴がいたら……それも例外なく殺す事になってるわけだが、どうやら極端に小さなパウジーフラワーというのはいないらしい。
「これでおわりなんでしょうか? 物足りないですね」
そんな事を言うのはリリアだ。確かに強者な彼女にとってはこれでは満足出来ないだろう。でも俺達は人種だ。人種は弱いから、命が残ってれば、やり方なんてのは問わないのだ。汚い? 卑怯? じゃあ正面からぶつかってまともに戦える様な配慮を奴らはするのか? 命の取り合いで、そんな事をする奴らは種にだっていないだろう。そもそもが、そんな提案なんて起きる筈もない。
弱いからこそ、俺達は工夫するんだ。気付かれる前に刈り取るのもその工夫だ。卑怯ではない。戦術だ。だから俺達はリリアとは違ってホッと胸をなで下ろす。無事に終わったと言う事が何より大切だからだ。手応えなんて物は俺達は求めてない。なにせ元々俺達が相手してたのはそれそこ同胞達だ。その中での権力争いに散々利用されて来たわけで……そんなので手応えに喜びでも感じていたら、それはもうヤバい奴だ。ただの快楽殺人者みたいな……さ。
俺達はそこら辺を律し、そして落とし込んで理性と言う名の人間性を保ってられるそんな集団だ。任務はただただ淡々と。それだけ。それ以上を俺達の様な仕事を請け負う奴らはもってはいけない。それを持ったとき、どんどんと人から落ちていくことになるのだから。
「ボス! 花が!!」
ボールのそんな言葉。すると、辺りの花が一気に枯れていく。もしかしたら、ここの花はパウジーフラワーの力の影響を受けて咲いていたのかも知れない。つまりはここの花が枯れ出したという事は、パウジーフラワーの力がなくなった証明だ。この湖畔の花畑が全て枯れると、完全なるパウジーフラワーの消滅だろう。一つの種が消える。それもこれだけ綺麗に花を咲かせる――それは悲しいことなのかも知れない。
だが、ここはそういう世界で、そして今はそういう時代だ。人種は常に滅びと戦ったきた種で、滅ぼす側になる――なんて思ってもみなかった事。だが、事実俺達は残り、そしてパウジーフラワーはここに滅んだ。そして更に生き続ける為に、俺達は世界を取る。カタヤ王の下、そしてラーゼ様の導きのままに。
そんな事を想ってると、枯れ出していた花畑に異変が起きる。それは枯れ広がるのが止まった。このまま、花たちは全て枯れて、そしてパウジーフラワーという種が終焉を迎える。そんな予定だったが、何かが起きようとしてる。




