H50
(パウジーフラワーの女王かなにかか?)
俺は水面でそう考える。他の奴らは一つの体に一つの花が頭のような部分から生えてるんだが、あの女王は複数の花が絡み合ってる。どういう事なんだろうか? あれもパウジーフラワーでいいんだよな? とりあえず静かに岸に近付いて、パウジーフラワーがいない方の岸から上がる。湖の水がポタポタと落ちるが、このマントの機能で直ぐに水分が落とされる。なんて便利な。これならポタポタした水の跡で見つかるなんて事は無いだろう。
(穏やかな種の様に見えます)
(それでも、やる事にかわりはない)
俺達の任務はこのパウジーフラワーを殲滅することだ。それは決定事項な訳で、相手にどんな事情があろうとそれは変わりようがない。相手がどんなに穏やかに見えようが、止めることなんて出来ない。そのくらいサポもわかってる筈で、てか納得して協力してるんではないのだろうか?
(私達はラーゼ様に保護されてます。役に立てるのなら……と思って請け負ったのです。大切なのは自分たちであり、他の種は全てが敵。それがこの世界。そして世界は別れる事を望んでいます。頂点を……決めることを望んでるのです」
「どういう事だ?」
(つまりは……私も納得してると言うことです。どんなに穏やかな種でも一度戦闘となれば、戦う物。弱肉強食……それがこの世界の理です)
「それはつまりはちゃんと協力してくれるって事だろう?」
(もちろんですよ)
それだけ聞ければ十分だ。下手に邪魔とかされてもサポの立場的に俺達では手出しが出来ないからな。見た目に反してドライのように思うが、そういう物だろう。どうみてもサポの種って弱そうだし、そこら辺苦労して来てるだろうから、他の種に過度に肩入れなんてしないんだろう。後ろを見ると、ポタポタと落ちる水が見える。皆も同じ場所から上がってきたらしい。パウジーフラワーはそこまでおおくは無い。バッとみた感じ、50体くらいだろう。だが、それらを一度にやれる程の人数はいない。
そうなると、どれからやっていくかが大切だ。とりあえず離れた奴を狙って行くべきだが……あの女王の様な奴が気がかりである。なにせあの女王には顔がない。どういう風に視覚を確保してるのか分からない。
まあ他のパウジーフラワー達も目とかがあるわけじゃないが……俺達は透明なまま、陸に展開していく。音は立てない。そのくらいの技術は皆有るし、装備のサポートもある。どんな敏感な感覚が有ろうともバレる事は無いだろう。正確に奴らの数を把握して、そしてタイミングを見計らう。一番の理想は一回の行動で全てを終わらせる事。確かに数は足りないが、出来ないわけじゃない。奴らの弱点はあの花だ。それだけを狙う。問題はやはり女王……だが弥利用はある。俺は手に一つの容器を持った。




