H40
「うおおおおおおおおおおおお!?」
「あああああああああああボス! これいじょうはあああああ!!」
なんとかしてさっきのひっくり返った大地はしのいだ。だが……それで俺達は全てを出し尽くした。出来る事、やれる事をやってあれを耐え忍んだんだ。それは俺達のチームだけじゃなく、残りのダンプの方の仲間達も同じ。なにせあの大地の捲られるような現象は一カ所だけで起きたわけじゃない。寧ろあんな現象が一カ所だけで起きてたら逆に驚きだ。まあつまりは俺達は今を生きる為に、さっきの状況を全力で乗り越え立った。事だ。
そしてそれのせいで、今やダンプは横倒しになって、むなしくそのタイヤをカラカラと回すだけになってしまってる。皆がダンプからなげだされ、大地に立ってる者は居ない。自分たちの周りには魔物がいる。奴らは今にもその牙で俺達にかみついてこようとしてる。
(ここまでか……)
そう思うしかない。既に体が動こうとしないんだ。そんな中、牙を向けてきてる魔物達が一瞬それを閉じてあらぬ方向を見た。本能でつき動くような魔物が目の前の獲物から意識を外す? そんなことが起こりえるだろうか? でも実際起こってる。これはチャンスだ。まだ生きろと世界が言ってるのかも知れない。でも悲しいかな……体は動かない。そんな事を思ってると、何やら同じ方向を見てた魔物共が一斉にワナワナト震えだした。
(一体どうした?)
そんな事を思ってると、行き成り魔物達が苦しみだした。ダメージを与えたわけでもないのに、のたうち回る魔物達。いや、こいつらの場合、ダメージを与えたってこんな反応はしなかった。自分たちの体の事とか、お構いなしに向かって来てたんだ。そんな異常だった魔物達が今……のたうち回ってる。まあこれも異常……か。俺達はこの隙をついて、とりあえず魔物達から距離を取りたいところだ。
そんな視線を交わしてるわけだが……いかんせん、のたうち回ってる魔物達はとても危ない。何せのたうち回ってるんだからな。暴れ回る――とかよりはまだマシだが、のた打ち回るのも十分危ない。なにせ俺達は限界来てほぼ全員、地面に這いつくばってる。そして勿論、立ち上がることなんか出来ないから、這って移動することになる。そう、この魔物達がのたうち回ってる中を這って移動するんだ……危険極まりない。だけど、その場でジッとしてれば安全かって言われるとそうでもない。のたうち回ってるからな……いつそれに巻き込まれて潰されてもおかしくはない。動かないのも危険だし、動くのも危険。安全な場所なんて無い。
なら、我ら舞台は進むのみだ。死をも恐れぬ……死をもたらす部隊……それが我ら第555独立遊撃部隊。そんな矜持を胸に取り戻してると、魔物達から何やら黒い物が出てきてた。それがそれが一斉に同じ方向へと流れていく。
(おかしい……)
俺は直ぐにそう思った。それは黒い靄のような物だ。普通はそんなの僅かな風にだって流される。けど、それは風が吹いてる向きとは逆に進んでる。明らかに自然の現象じゃない。
そう思った次の瞬間、何か光が走った様に見えた。その瞬間、のたうち回ってた魔物達が灰と化していく。
「うーん、一歩遅かったかな?」
そんなことを言って現れたのはリリアだ。いや、間に合ってますけど? そう言いたいが、なんとなくその言葉は俺達のことを指し示してるわけではないような気がした。




