H35
私の力は花の一帯を打ち砕く。けど……
「ん? うわぁ……」
私はそんな声を出してちょっと引いた。だって……ちぎれた分だけ再生して増えたからだ。まさか単一再生が出来るとは……あれは全部同個体と思って良いのだろうか? いや関係ないか。半端に倒そうと思ったから、ああなっただけだ。跡形も残さずに消せば良いだけ。あの今再生してる奴ら……あれは今ここで潰してお家庭とやっかいだ。なにせ小さいし、ここは森。逃げられたら、実質完璧に消滅させることなんて不可能。だからまずはあの小さくなった花、全部を狙う。
私は腕から黒い炎を出す。それを森とは呼べなくなってる、私が吹き飛ばした直線上の範囲に展開した。黒い炎の柱が行き成り数キロに渡って立ち上ったことになる。けど必要だった。一度木々が生い茂ってる部分に逃げられたら、終わりなんだ。なら確実に見える今、確実に捕らえられる範囲を覆う必要があった。それが私が木々を吹き飛ばして、ハゲた森となってる部分全部だ。相も変わらずこんなのデタラメだろうか? けどしょうがない、だって私は魔王。魔王ミリアなのだ。どんなアホらしい事だって私にはできる。出来てしまうのだ。
森が茂る部分に逃げられなくなった分裂再生した歯などもは慌てふためいてる。なにせただ分裂して再生しただけだ。個々の力は弱まってる。後数体、でっかい花のままの化け物がいるが、奴らが走ってる部分全てを私は黒い炎で覆った。焦る必要なんてもう何もなくなった。下手にデカい奴を攻撃して小さくするのも悪手でしかない。ならこのまま……このまま全部まとめて焼却処分だ。
それが一番で……そして尤も安全な方法だろう。私的にはつまんないけど……魔王となって、私は戦いを渇望してる。それは驚く程の変化だ。私は人だった頃、平和を願ってた。平和な世になるのなら……そんな思い出戦ってたはずだ。けど魔王となっては、私自身が戦いを欲してる。それは間違いなくあって……私は戦ってる、どうやら酷く楽しそうに笑うらしい。そうまさに魔王に相応しくだ。
「そのまま逃げてどうにかなると思ってる?」
私がハゲ散らかしたその領域からは逃げられないよ。確かに数キロ先にはゴールがある。でも……そこが開いてるわけは無し。逃がさないための黒い炎の壁なのに、わざわざ出口を開けておく訳ないじゃん。そこら辺を理解して欲しいね。まあただの花には無理なのかも知れないが……
「ん? おお」
ただ逃げ続けると思ってた花が何やら花びらの中心から何やらポンポンと出し始める。そしてそれがそこまで早くもないスピードで私に迫る。どうやら攻撃に転じたらしい。でも遅すぎる。不規則に動いて迫って来てるのは面倒だけど、この遅さなら避けるのも簡単だ。でもそれは私にぶつかる前に爆発した。そしてまき散らすは粒子みたいな物だ。
「こいつら――」
どうやら奴ら、どこまでも逃げに徹するらしい。はっきり言ってやっかいだ。向かってくる奴らよりも逃げ続ける奴らの方が倒しきるのは難しい。この粒子もそう。目くらましとか、これにも若干の攻撃とか、そしてこれは実際花粉みたいな物なのでは? そうなるとこれが風に乗ってどこかに行くだけで、あの花は生きるのかも知れない。
「ごめん間違ってたよ。あんた達は、生きることが戦いだって事ね」
それを理解してあげた。そして粒子自体を燃やし尽くして私は黒い炎を再び奴らに投げる。




