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H32

 私は自身のマナを解放する。あふれ出したマナがキラキラと周囲を照らす。そして逆に僅かに空いたスペースに私は周囲のマナを取り込む。


「不味いな……」


 私はこの森のマナの感想を漏らす。とても不味い。まるでこの星のマナではないかのよう。


「なるほどね……」


 なんとなく、正体がつかめてきたよ。この森の異常の原因。ここの魔物はやけに私達を敵視してる。それは魔物として変な事じゃない。魔物とは全てに暴力を振りまく……そんなはた迷惑な存在なのは確かだから。でも……その変化の形が私達が見てきた魔物とは違うと思う。それは形の変化だったり、力の形だったり……だ。この森の魔物達はやけに歪だ。形がおかしすぎる。頭がある部分から腕が生えてたり、頭が変な場所に行ったり、そもそも形をまともに保ってられないようなのまである。足がなくなって全て腕になってたり。そうと思えば、腕だけなのに一本しか指無かったり……めちゃくちゃだ。


 それはきっとこのマナのせいだろう。この星のマナなら、幾ら魔物でも魔物としての形は保ってる。いや、魔物としての形というか、生物としての形かな? 頭があって腕があって足があって……歪なところはあっても、不都合がないようには作られる。でもこいつらは違う。明らかに不都合を無理矢理どうにかしようとしておかしくなってるとしか思えない。そんな形が多い。それは全く違うマナが生物に与える弊害何だろうね。嘆かわしい。この綺麗な世界に、既に消えた奴のマナなんて必要ない。


「ふん」


 私は取り込んだマナを塗りつぶす。普通はこんなこと出来ないだろう。でも私は魔王。世界樹と繋がる存在だ。マナを扱う術は長けてる自負がある。それこそラーゼなんかには負けない。これを分かっててラーゼはここに彼等を送り込んだのだろうか? 


「でも、彼等じゃ流石に役不足じゃないかしら?」


 私とか、魔族があと二人居るからまだいいけど、最初の彼等の戦力だけでは流石に足りないと思う。それこそかなりの部隊を投入しないとダメな数がここに居る。私が居るから彼等はまだ生きてるのであって、私が居なかったら彼等は早々に死んでただろう。


「それでも良かったのかも」


 失敗するか成功するかは実はラーゼ的にはどうでも良いのかも知れない。だから少ない戦力しか投入してない。でもそれなら他種族も送り込んでるのはどうなのだろうか? 人種はね。いくらでも居るから、代わりなんてどうにかなるだろう。それこそ今は彼等の装備はかなり進化してる。その装備を使えば、今まで猛者と呼ばれていたような人達に直ぐに近づけれるし、装備が更に進化していけば、その補助でさらなる強さを手に入れられるだろう。


 彼等のような個々の強さを誇る人達が邪魔になった……とか? うーん、よく分からない。とりあえず今はこの森の気に入らないマナをまき散らす奴を倒す。私の目的は今やそれだ。私は木々がぽっかりと無い場所にたどり着いてた。そこには木々がない代わりにグロテスクな色と形をした大きな花が強烈な匂いと共に、例のマナをまき散らしてる。

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