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H27

「えーい!!」


 そんな気の抜けるような声を出しつつ、リリアがダンプの天井を蹴って飛び出した。ダンプには殆ど衝撃なんてこなかった。だけど次の瞬間、彼女は襲ってきてた魔物の目の前へと目にもとまらぬ速さで到達してた。


 筋骨隆々で胸板をやけに叩いて威嚇をしてきてたその魔物はその速さに驚いて拳を打つ。だがそれに会わせてリリアも拳を出した。その大きさは全然違う。彼女の腕は白魚のように白く、そして華奢だ。対して相対する魔物はまるで大木かのような腕をしてる。普通に考えれば、梨里杏の腕があの腕に勝つなんて事は想像できるはずがない。だが――


「がぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 ――次の瞬間、魔物の腕は消え去ってた。しかも肩口からだ。黒い血液が飛び出して噴き出して周囲を汚してる。一体何が? はっきり言って何も見えなかった。けどそんな俺達にバンセンさんが言う。


「消え去った、腕自体が」

「それって……」


 どうやらリリアはぶつかった腕をちぎり飛ばしたとかじゃなく、ぶつかったそのエネルギーで消滅させたらしい……恐ろしい。なにそれ。意味がわからない現象が起きてたらしい。なるほど、だから魔物の方も困惑してるのか。魔物は総じて再生能力的な力を持ってる。だからちぎれた腕くらいなら、強引に押し当てればくっついたりする。更にやっかいな性質を持ってる奴なら、そもそもがなくした部位を生やすなんて事をしてくる奴も居るくらいだ。

 だが今回のあの不孝な魔物はそこまでの再生能力は有してないみたいだ。何せなくした腕部分を抑えるしかしてない。まあ直ぐに血は止まったが……一瞬にして自分の体よりもデカい腕を一撃で消し飛ばしたリリアと相対するには片腕では役不足だろう。てか……


(本当に危なげが無いな)


 わかってたことだ。何せ彼女は魔王。魔族を統べる王……魔王ミリアその人なのだ。しかも彼女は歴代最強の魔王らしい。まあ魔王なんて人種の残した文献では殆ど記述なんて無いから俺達にはそれがどの程度かなんてのはわからない。だが……肌で感じる。あれは桁が違う……いや格が違う。それがわからないのか、魔物は更に動いた。赤黒いオーラとでも言うような物が魔物の体を包む。すると奴の体表に血管が浮き上がり、その筋肉が肥大化する。最初から三メートルは超える巨体だったが、今は更に全長が五メートルは超えている。そして目は爛々と輝き口を大きく膨らませる。そして体を大きく反らしたと思ったら、リリアに向かってそれを吐き出した。


 真っ赤な光が溢れる。周囲を染め上げるほどの力。筋肉は飾りか! と言いたくなるほどの光線だった。まさにそれが炸裂したてたら、周囲一帯が更地になるような……まさにそんな一撃。だが……次の瞬間、リリアはそれをあっけなく跳ね返して魔物上半身を消し飛ばしてた。何をやったかって? それはただのデコピンだ。彼女はたった一本の指で周囲一帯を更地に変えるようなエネルギーをはじき返したんだ。


「さあ、どんどん進みましょう」


 そう言ってにっこり笑うリリアに俺達は呆然とするしかない。だがこれから襲撃される種の運命は決まったな。俺達も最初から最善を尽くして殲滅をする気だった。だが……リリアがいるとそれは殲滅ではなくて蹂躙になるだろう。それは俺達の任務がとても簡単に終わると言うことだ。ありがたい。

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