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めんどくさがり屋の異世界召喚

作者: リエッタ

 これはとある田舎者の超めんどくさがり屋の男の話である

 その男はめんどくさがり屋で最低限のことぐらいしかしようとしなかった

 付き合い等で何かをしなければいけないときがあったが、要領がよかったためか、大抵の事は出来た

 プロになる人間はそこからさらに精度を上げたり、威力を上げたりとそこで満足せずに精進する

 だがその男は違った

 大抵の事が出来るならそれで良いじゃないかと、それ以上やるのはめんどくさいの一言でばっさりと切り捨て、それ以上精進するようなことはなかった

 そんな男が東京に来た時、異世界召喚に巻き込まれた

 

 

 

 

 男としてはただ歩いて賃貸住宅に向かっていたはずなのに気が付けば神殿っぽい場所で知らないたくさんの男女に囲まれていた

 知らないところに一瞬で連れられて囲まれる

 これは噂の喝上げか。東京は怖いところだなと男は思い、おもむろに財布を探す

 これだけの人数と殴り合いとかめんどくさくてやる気がなかった

 諭吉を稼ぐには相当めんどいのでこれだけは渡す気はなかった

 そのため、諭吉様をそっと懐に忍ばせ残ったお金を財布ごと差し出そうとしたところ

 

 「勇者様、どうか我々を助けていただけないでしょうか?」

 

 お決まりの台詞が来ました

 助ける?なんかめんどうそうだ。やだ。パス。責任超嫌い

 男はそう思った

 

 「これ上げるから勘弁して」

 

 そう言ってお金が入っている財布を渡し、

 

 「じゃっ」

 

 腕を上げて立ち去ろうとした。

 しかし、その腕には見知らぬ女がしがみついていた

 まるで手を上げさせまいと

 その見知らぬ女の後ろにはたくさんの見知らぬ男女が掴っていた

 昔話のおおきなかぶのかぶか

 男はこれを見て立ち去るのは非常に疲れるから止めとこうと諦めた

 しかししがみつかれて困ってしまった男

 このままだと逃げることもできない

 どうしようかと悩んでいるところに見知らぬ女が懇願する

 

 「どうか、我々を助けてください」

 

 男は思った

 この財布だけではお金が足りないというのであろうか?

 くそっ

 狙いは諭吉様か

 これを稼ぐめんどくささとこいつらを振り切るめんどくささを天秤にかける

 諭吉……時給800円の12.5時間

 こいつら……いつまでしがみついているかわからん。計測不能

 

 さらば諭吉様

 

 「これを使ってください」

 

 そう言って左手で懐から諭吉を出す

 見知らぬ女はぽか~んとしたままつい手に取ろうとする

 そう、人は何かを出されたらなんとなく受け取ってしまう習性がある

 そして、そのことにより男は右手が完全にしがみつかれていた状態から緩まる

 男は考えた

 今なら諭吉様も守ることが出来た状態で喝上げから脱出することが出来るのではないか?

 いや、しかし助けてくださいといっていたな

 ということは親の入院費を稼いでいるかもしれない

 となると、諭吉様を渡せばこちらを追いかけてくることはなかろう

 逆に渡さない場合だと、ずっと追いかけてくるだろう

 ならば

 ……さらば諭吉様

 心で別れを告げて、諭吉様を手から離す

 諭吉様がひらひらと舞い降りる

 見知らぬ男女が人の習性で諭吉様に目を向け、落とすまいと駆け寄る

 そのため、見知らぬ男女は男から目を離した

 諭吉様が地面に落ちる前にキャッチをして、男に目を戻すとそこには男の姿は見当たらなかった

 見知らぬ男女等は驚いた

 

 「そんな馬鹿な?」

 「どこに行った?」

 「まさかこのお札に何か仕掛けたあるのか?」

 「消えた?」

 「勇者召喚は失敗だったのか?」

 「アレは勇者召喚は成功したという幻か?」

 「いや、アレが幻だった場合、ここに残っているお札やこのお札入れが残っているわけがない」

 「そうだ、それに召喚が成功の証の光の柱があったではないか」

 「なら、なぜいないのか?」

 「勇者召喚は成功して、このお札が落ちている間に勇者送還が実施されたのでは?」

 「まさか!」

 「そんなはずは」

 「だって、送還するために必要なものが何もないぞ」

 「いや、そもそも送還の条件がわかっていないではないか」

 「まさか送還するための条件はこのお札なのか?」

 「前回のときはそんなものはなかったではないか」

 「記録がないだけかも知れんぞ」

 「そんなことを言ってたらキリがないぞ」

 

 喧々轟々

 

 

 時間にしても1時間ほど経ったであろうかという時に後日再調査をするが暫定的に送還されたという事で決着が付いた

 しかし、見知らぬ男女たちには大変な問題が起こった

 勇者召喚をするということは、それ相応の脅威が迫っているということである

 それ相応の脅威……魔王

 勇者を当てにしていた為、魔王対策を一からやり直す必要が出てきた

 魔王対策について会議をするために神殿から出て行く見知らぬ男女たち

 

 

 一方消えた男はどうなったか

 実は消えた時、男は未だ神殿にいた

 しかも見知らぬ男女たちの目の前にいた

 だが、見知らぬ男女たちには消えたように見えた

 なぜか

 諸君にもこんな経験はないだろうか?

 ぶつかっても謝られる事はない

 レジ待ち中に割り込まれそうになる

 食べている最中なのに皿を片付けられそうになる

 等々まるで存在していないかのように扱われる……そんな経験ないだろうか?

 確かにいるのに、存在が希薄すぎて非常に認識しづらい

 男はその状態を【超省エネモード】と名付けている

 見知らぬ男女たちが喧々囂々している時に勇者召喚、魔王の単語を聞いて男は以下のように理解した

 ・魔王という名前の不良がいる

 ・しかも非常に不老長命

 ・あまりにも不良過ぎたため、牢獄にぶち込んだ

 ・牢獄が長い間経つに連れ、さびてボロボロになってきた

 ・もうそろそろで壊れそう

 ・壊れたら魔王がまた復活してしまう

 ・復活したら魔王はこの国に対して喝上げを行ってくるに違いない

 ・この国は喝上げに対抗するために勇者を拉致った

 ・勇者を盾に魔王を倒そうとしたが消えてしまってさぁどうしよう

 これらのことを理解した男の感想が2つ

 1つ目は東京ってすげぇな。DQNネームが流行っているって聞いていたが魔王かよ。なんでもありだ

 2つ目が……俺の財布……取られ損かよ

 返してもらおうかと思ったが、それで【超省エネモード】から戻ると余計に面倒なことになると思い、財布は諦めた

 

 

 

 【超省エネモード】になっている男は見知らぬ男女たちが神殿から出るときに一緒に外へ出た

 そこで初めて外の様子を見た

 その姿は近代的な姿とは似ても似つかないが男は「古き良き街並みを保存しているとは東京流石だぜ」と頑なに召喚された事実を否定していた

 

 

 さて、この【超省エネモード】はその名のとおりエネルギーの消費が非常に少ない

 この状態だと大体5~7日程度はご飯を食べなくても生きていける

 しかし、今男は無一文であった

 財布を渡し、諭吉様も手放し無一文

 働くか……それとも自給自足か

 考えた末に男が選んだのは自給自足の道だった

 給料支払いが1ヵ月後しかなかった場合、【超省エネモード】でも生きていられないからである

 男はめんどくさがり屋ではあるが、死にたいわけではない

 

 男は町並みに囲ってある城壁に上り、川と森林がある地域を探す

 見つけた

 ズボンのポケットに入っていたコンパスを見る限りはこの街から北西の方に目的の場所があった

 【超省エネモード】で城門をやり過ごす

 そして、ズボンに入れてた賃貸住宅の地図の裏に簡易地図を描きながら男は目的の場所へ向かった

 

 

 

 

 

 時刻は夕暮れ

 道中は誰にも会わずに目的の場所に到着した

 誰かに出会えることがあれば、賃貸住宅の地図からどこへ行けばいいか聞きたかった

 しかし、会えなかった以上自分で探すことにした

 これ以上歩くのもめんどくさいし、森林で野宿をすることにした

 

 

 次の日、起きて探索した

 木の上に木の実あり

 毒を警戒しながら少し齧ってみる

 問題なし

 川の水を見てみる

 色は綺麗で特に問題なし

 少しだけ飲んでみるがお腹が痛くなるとかもなかった

 こちらも少量であるなら問題はなさそうだ

 実はこの木の実と水

 進化作用がある

 男は知らず知らず徐々にスペックが高くなっていた

 

 

 

 飲み水と食べ物を確保した後は男は住む予定の賃貸住宅を探した

 北に東に西に南にと拠点を転々としながら賃貸住宅を探した

 1ヶ月は経っただろうか

 闇雲に探しても未だ見つからない

 

 

 それから2ヶ月ほど経ったころだろうか

 男は小屋を見つける

 人がいるのではないかと期待した

 

 こんこん

 

 「ごめんくださ~い」

 

 

 ………………

 

 

 …………

 

 

 ……

 

 

 返事がない

 ならば

 

 「お邪魔しますー」

 

 そう言って【超省エネモード】に切り替えて中を探索する

 もし人がいた場合、不法侵入で訴えられでもしたら大変だからである

 男は奥へ奥へと入っていく

 15分ほど入っただろうか

 中に牢屋が見える

 そして中から声が聞こえた

 

 「やあこんにちわ」

 

 男は驚く

 まさか【超省エネモード】で気づかれるとは

 しかし、気づかれた以上このままでは相手に失礼になると思い【超省エネモード】を解除する

 そして挨拶

 

 「はじめまして、こんにちは。返事がなかったので勝手にお邪魔させてもらったのですがよろしかったでしょうか?」

 

 そういえば会話とかいつぶりだろう

 

 「あぁいいよいいよ。この家の本当の持ち主はもうとっくの前に死んでしまったし」

 

 「そうなんですか。ご冥福をお祈りいたします。所であなたは牢屋で何をしているのですか?」

 

 「私?何もしていないよ。ずっとここにいるだけ」

 

 「牢屋にいるってことは何か悪い事したのですか」

 

 「まぁちょっと色々ね。私魔王だから」

 

 「魔王さんですか?」

 そこで男は思い出した

 DQNネーム魔王さんを

 なんと女性であったとは

 

 「そ」

 

 「ちなみにあなたは牢屋から出たいとかは思わないのですか?」

 男は少し同情していた

 女性でこのDQNネームでぐれるなって方が無理だと思う

 

 「ん?だしていいの?私魔王だよ?」

 

 「えっと、また悪いことをするつもりでしたら反省の色なしで出しませんが、しないのでしたら別に良いのでは?そこらへんはどうなんですか?」

 

 「まぁするつもりはないよ」

 

 「なら後はあなたが出たいか出たくないかです。さぁどっちでしょうか?」

 

 「う~ん、牢屋も飽きたから出たいかな」

 

 「わかりました。少々お待ちください」

 

 そうして、高いスペックを持つ男はボロボロになっている牢屋を破壊した

 牢屋と破壊して初めて会う男と魔王

 

 「立てるか」

 

 「長い間座っていたから無理かも。おぶってくれないか?そしてちょっと外まで連れて行ってくれないかい?」

 

 「それぐらいならいいぞ」

 

 魔王をおぶり外まで連れて行く男

 外に出た瞬間魔王は感嘆を上げる

 

 「おぉ、いつぶりの外だろうなぁ」

 

 色々と感慨深いんだろうなぁ

 まぁ暫く好きにさせておこうと思っていたら背中から声が聞こえた

 

 「なぁなぁ男よ。ちょっと聞きたいんじゃが……」

 

 「なんだ?」

 

 「その……私は恋とか知らないもんでな……だから…………その」

 

 「なんだ?」

 このやりとり、とてもめんどくさいと思う男

 それが通じたのは魔王は言う

 

 「わ、私と結婚してくれないか?」

 

 は?と思ったが瞬時に結婚する場合と結婚しない場合を想定してみる

 

 結婚しない場合……多分不良に戻る。散々迷惑をかけることこの上ない。【超省エネモード】も効かない。非常にめんどそう

 結婚した場合……良妻賢母になってくれ……るといいなぁ。まぁある程度はコントロールできるだろう

 

 そして導いた結論

 

 「いいぞ」

 

 「いや、やっぱ無理だよ……ぇぇぇぇぇ???いいの????」

 

 「いいぞ」

 

 「私魔王だよ?」

 

 「知ってる」

 

 「いいの?」

 

 ぇぇい。めんどくさい

 「嫌ならなか……「嫌じゃない」そうか。これからよろしくな」

 

 

 

 こうして男と魔王は結婚することになる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結婚することになり男はある懸念があった

 そう、賃貸住宅の契約を1人から2人に変更しなければ……

 

 

 

 しかし、男は重大なことに気が付いた

 

 

 

 

 

 そう、賃貸契約1ヶ月しかしてないからもう切れてるよ

 

 

 

 

 

 男は賃貸住宅を探すことを諦めた

 

 

 ~Fin~

 

 

 

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