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スライムとクノイチ★

 端的に言うとビッグスライムはとにかくHPが多かった。攻撃力は大したことがないため回復を怠らなければ致命的なことにはならない。だが、削っても削っても倒れないのだ。かれこれ一時間ほど戦闘は続いていた。



 「うぜぇ!チュートリアルボスならそれらしくさっさと死ねよ」



 回復支援の合間にメイスという名の金属バットで殴り掛かりながら聖子が悪態をつく。



 「う~、こういうときは大火力の魔法でもドッカーンといきたいよ~」



 ウッドゴーレムを操りながら幸恵はなかなか減らない敵のHPバーを睨み付けた。



 「攻撃力が低いから恐らくパーティー戦闘の練習台も兼ねているのでしょう。……けれど埒があきませんわね」



 ユミが木の矢を放ちながら渋面をつくると、幸恵が唇を尖らせて続ける。



 「こう、テンプレだとスライムは核を破壊して大ダメージ……なんだけど、まわりのプルプルが邪魔で攻撃が届かないんだよなぁ」


 「くそ、直接殴りに行けりゃあいいんだが」


 「それだ!」



 聖子の台詞に被り気味に幸恵が叫ぶ。



 「直接殴りに行こう!」


 「は?」


 「ゴーレムの外装なんかただの飾りですよ。偉い人にはそれがわからんのです」



 キリッと呟いて幸恵はゴーレムをスライムに突入させた。ズブズブとゼリー状の体に埋まると木製のゴーレムの外装が少しずつ溶かされていく。しかし、ゴーレムを操るだけなら関節が動けば問題無い。


 外装の大半を溶かされながらもゴーレムは核まで辿り着く。



 「いっけーッ!」



 そのままゴーレムがビッグスライムの核を殴りつける。ピシリと入るヒビ。そのひび割れが徐々に広がっていくと、ビッグスライムのHPバーも加速度的に減少していき、ついに核が砕け散った。



 【ビッグスライムを撃破しました】


 【ドロップアイテム・ビッグスライムの核、初めての調合実験セット、ガチャ券、打ち上げパーティーセットAを獲得しました】


 【スライムゴーレムの召喚が可能になりました】



 空中にテロップが流れていく。



 「……ボス戦の打ち上げパーティーまで用意してくれるなんて」


 「なんという至れり尽くせり」



 もはやお馴染みとなりつつある台詞を口にして三人は顔を見合わせた。



 「そんなことよりスライムゴーレムってなんだ?」



 聖子の問いに幸恵は早速スライムゴーレムを一体召喚してみることにする。するとプルプルと震えるピンク色のスライムが現れた。



 「むー……操作し辛いよぅ」



 関節が無いため上手く操れずに幸恵が唸る。先程のビッグスライムとの戦いを思いだし、体の一部を伸ばして触手を作るように念じると手のように動かせることが解った。ウネウネ動くピンク色の触手を見詰めて「エロ同人みてー」とぼやく聖子。



 「よいではないか~、よいではないか~」



 調子に乗った幸恵がスライムを伸ばして聖子に絡み付かせる。



 「あーれー……とでも言うと思ったか!離せボケッ!」



 振りほどくべく聖子がガシッと触手を鷲掴みにすると、ふざけていた幸恵が急に焦り出す。



 「あ!?ちょっと待って……まだ操作がっ、慣れてないから……あ!」



 そのまま慣れない操作にスライムゴーレムを操り損ねて触手が暴走。暴れる触手がナース服の下に潜り込んでいった。



 「え?あ、ちょっ……!」



 服の下をまさぐられて聖子の豊かな胸がビクンと揺れる。そして響く悲鳴。



 「ふぇあぁぁぁぁっ!?」



 しばし地上波放送出来ないような光景が続いた後、「……も、もう嫁にいけねぇ」と教室の隅で落ち込む聖子の姿があった。



 「さて、そんなことよりまたガチャ券がでましたから幸恵ちゃんに引いて貰いましょうか」


 「おいこら、そんなこととはなんだ」



 聖子の抗議を無視してユミは続ける。



 「極運に期待してますわよ?」



 スライムゴーレムを戻した幸恵がガチャ券を受け取り、アイテムを使用すると前回同様にカプセルが吐き出されて割れた。



 【転職券・忍者/忍者に転職出来る券。転職前に上げたスキルを引き継げる優れもの】



 「やったね!ユミちゃん!クノイチになれるよ!」


 「なんで私の転職が決定しているのです!?」



 決定事項のように言われてユミが突っ込みを入れるが、幸恵は聞こえないとばかりに熱弁を奮う。



 「NINJAだよ?クノイチだよ?夢と希望だよ?」


 「オレを無視した報いだ。諦めてクノイチになってしまえ」



 孤立無援のうえに、スキル的には盗賊の上位互換のようなジョブであったため多数決でユミの転職は決定した。



 「こんな……もうお嫁にいけませんわ」



挿絵(By みてみん)


 転職券にセットでついていたクノイチの初期装備を着たユミが光の消えた瞳でポツリと零す。


 太ももの付け根ギリギリの裾。胸元は網目の大きなシャツで覆われているが、網目が大きく羞恥を軽減する役には立っていない。体育館に戻れば悪目立ち確定の姿にユミは暗澹とした溜め息をついた。



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