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メリー’s クリスマス!

作者: 久遠深奥

╋╋╋╋╋╋╋  ←こんなのが出たら段落変更です。

聖なる十字架とかじゃないんであしからず。

いや、聖痕でもないです。

今日の日付。


12,25。


何の数字か、と聞かれれば――――


そう、クリスマスだ。


往生際の悪いやつは

1225年北条政子死去だの

何だの言うかもしれないがーーとにかく、イエス・キリストの誕生日である。


とにかくこの日、

世間ではカップルが

公然といちゃつき

幸せオーラを醸し出す。


このオーラは

いわばプラスエネルギー。

そこに俺も属す彼女不在同盟の残念オーラ、

いわばマイナスエネルギーが

ぶつかり、プラスとマイナスの相乗効果で

残念グループがより一層残念になる。

俺は街中でその風景を見、そして風景に混ざる。

例年ならそうだったのだが……



「わたしメリーさん。

今あなたの家の前に居るの。

雪が降ってて

寒くて死にそう。

入れてください。」



人生は長しと言えど、

妖怪に出会うなんていうのは

今年ぐらいじゃなかろうか。



╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋



玄関へ行き、

覗き穴から見た

『自称メリーさん』の

上半身は、

もちろん女性だった。

服は白く、もこもこして

暖かそうだ。


顔は…………


可愛い?

いや、まあ

覗き穴が曇ってて

見えないからの微妙だが。


とりあえず、聞いてみよう。


「あの、あなた本当に

あの『メリーさん』てすか?」


もしかしたら、

今日をハロウィンか何かと勘違いしてる

アレな人かもしれない。


「そうですよっ

仮装とかじゃありません!

証拠に……

本気を出せばこんな家、

三分で入れます!」


三分もかかるのかよ。

カップヌードルができるぞ。

嘘っぽい……

開けないほうが良さそうだ。

新手の詐欺かもしれない。

……言うなれば、

そう、妖怪詐欺?


それに、入れるなら無断で入ればいいのに。

やっぱ偽物かこいつ。


「知らないんですか?

それは不法侵入です。

犯罪ですよ?

サイレンうーうー鳴らして

警察さんのお世話です。」


人間のくせに、とか

ぶつぶつ言ってるが、

うーうー鳴るのは

消防車だ。

…あれ?


「今俺喋りました?」


「妖怪ですので、

心ぐらいは」


「……絶句」


ていうか絶句って口に出したら

もう絶句じゃないよね。


「今考えるべきことそれですか…?」


……本気で読まれてるらしい。

ヤバいな。本当にメリーさん!?

メリーさんって確か

気がついたら後ろにいて

後ろにいて…



どうなるんだっけ?


「襲うんですよ、

がおーって」


がおーって。

しかも心自然に読まれた……

っておい。


「じゃあ入れません」


通りに招待するようなもんじゃないかよ。


「外は寒いんです。

襲いませんよ、

クリスマスは聖夜なので

力が弱まるんです」


さすが妖怪。


「…ごめんなさい嘘です」


さて。チェーンをかけて南京錠を……


「な、なんでですか!入れてください!」


じゃあ何故嘘つくんだよ……


「そうでも言わないと

入れてくれないし……

で、でも、嘘を着くのは

いけないよってお母さんが……」


……やばい。

面白いかもこいつ。


若干入れてもいい気分になってきたが、普通に入れるのも癪だしなあ……


「……しゃく、ってなんですか」


3センチ。


「…い、いいかげん

入れてくださいよ!

入れてくれないと…」


どうなるんだ?


「寒さで倒れちゃいます」


世界が平和になるじゃないかよっ!


「で、でも

わ、私を倒してもね、

第二、第三のメリーが…

あなたを襲いますよ!」


メリーさんって

複数居るんだ……


「え?私って

二人も三人も居るの?」


お前が言ったんだろ!

まあ……


「メリーさんが集団戦法使ったなんて話は聞いたことありませんし、

居ないとは思いますよ」


「良かった……

同じ顔とか怖いしね!」


「……そうですね」


適当に相槌。

正直こいつなら怖くねぇ。


「で……何だっけ」


来た用件忘れやがった!?

……あ、そうだ


「あれですよ、

クリスマスだから

俺にプレゼントを

持ってきたんじゃないですか」


騙せるかなぁ……っと。

心読まれるんだった

プレゼントプレゼントプレゼントプレゼントプレゼントプレゼントプレゼントプレゼント……


「……あなたが私に?」


誰がやねん。


「違う。あなたが俺に」


「……あ、本当だ

紙袋持ってたよ私」


持ってたんだ……。


「じゃあ入れてー」


…………。

まあいいか。

なんか勝てそうだし。


「何にですか?」


「妖怪にです。よい、しょっと」


鍵を開ける。


「お邪魔します」


妖怪のくせに礼儀正しかった。あ、そうだ

一応言っておくか。


「メリークリスマス」


そう言ったとたん、

メリーさんはにやっ、とした。


「メリーだけに?」


…………いらっ


「え?」


「あ、いや、ほら私、メリー…」


「え?」


「め、メリーだけにメリークリスマスっ!!みたいな…」


「え?」


「……さ、さようならっ!!」


……勝った。


対妖怪への耐性がアップした。

開けたドアから寒さを入手した。

紙袋を得た。

虚しさが残った。

ドアを閉めた。

鍵をかけた。



ん?

……紙袋?


忘れ物、だろうか

この紙袋……開けていいのか?

駄目だよな?

でも?


「開けまーす」


人のものを盗ったら犯罪だが、妖怪だし。

メリーさんの持ち物も気になるし……。


紙袋、オープン!


「……袋の中に袋」


っておい。

なんだその肩透かし。

ただ、中の袋は真っ白な絹製に変わっていた。


だから何だよっ!



「その袋の中は……



…………袋」


いらいらっ


「袋。

袋。

袋袋袋。

袋袋袋袋袋って

もういいわ!!」


危うくゲシュタルト崩壊するとこだった。


深呼吸して落ち着いてから、周囲を見渡す。

狭い玄関いっぱいに袋が散乱していた。


…………うう、

やはり妖怪。災厄を残していった……。


「むなしい空しい虚しい」


ムナシイ三唱。

さらに気分が沈んだ。


……部屋戻ろ


その時、掃除をやる気も削がれ立ち上がろうとする俺の目が、

袋の下敷きになっている紙切れをとらえた。


何時の間に?


とりあえず立ち上がり、

壁に寄りかかって手紙を読む。見覚えの無い便箋。

メリーさんの落とし物だろう。

人(?)の秘密は密の味!


なになに……


『大木さんへ』


……俺の、名前!?


かつて俺は友人の中林と小森で『だいたい同じーズ』を結成していたんだ、間違えるはずがない。


それにしても……

名前を知ってるなんて、メリーさん俺に会いに来ていたのか?

便箋は三枚あるが…

先が気になる。読み進めよう。


『大木さんへ。


いきなり押しかけてしまい

すいませんでした。

今日は本当に寒かったので、

ずいぶんと早まったことをしてしまい、申し訳ありません。

でも、悪戯や悪意では無いことはわかって下さい

私は、この日を何日も前から楽しみにしていました。

そして、今日まで毎日

あなたのことを見ていました。』


便箋一枚目終わり。

……え?

メリーさんってストーカー?


…………に、二枚目だ。

次だ次。

俺は袋が散らかった床に玄関に背を向けて座り、

続きを読み始めた。



『あなたのことを一目見たときから、もう

この人しか無い!って

そう思えたんです』


……え?

照れる。


『外見はもちろん、

捨てられた子猫を

あの部屋に連れて帰ったのを見たときには、それはそれは

筆舌に尽くしがたいほど胸がどきどきしました。

あなたしか居ない。

そう思えたんです。


あなたに、伝えたい言葉があります。

たった一言ですけど、前置きやなんやらはもう十分でしょう』


2枚目、終わり……。


急展開すぎて

頭がついていけない。

妖怪に、惚れられた?

猫を保護したぐらいで?

戯言もいいかげんに、

あ?ううん?ええと……


さ、三枚目だ!

もしかしたら何か

勘違いしてるかもしれないし!!




三枚目の文面は数行で、

やけに短かった。

ほんの数秒で読み終わる。

でも……



『伝えたいことは

一つだけ。

私は、あなたの


うしろにいます』



理解するまでの時間は、

数秒じゃ済まなかった。


うしろ?

あいらびゅー、

じゃねーの?


俺の今の顔の表情は緩んだまま固まっていることだろう。

ん?それって

どうなってんだ?

緩みながら固まって……


……いや、思考を逸らしてはいけない。

冷静になれ、深呼吸を……





冷静になって、


そして、気付く。


手紙に、影が差して

文面が読めなくなっている。


さっきまで読んでいたのだから、影なんてあるはずが無い。


つまり、玄関の窓と

俺との間に、

ナニカが居る。


俺の、

背後に、


ナニカがーーーー



「なんでメリーさんが

『うしろに居る』

なーんて知らせるか知ってます?」



声が、した。

うしろ、から。



「さっきは

聖夜に弱体化ーなんて

嘘つきましたけど、

妖怪なんて基本的に雑魚ばっかなんですよ」



さっきまでと、

変わらぬ口調。

さっきまでと

同じ音程。



「でも、私達ーーー妖怪っていうのは、

人のおそれから生まれて、力を得るんですよ。

だから、『条件』を満たせば

『私達』は無敵にーー

噂どおりの力を発揮できるんです。

条件は場所だったり、時間だったり、行動だったりーー



『言葉』だったり」



声は、一致している。

でも。

同じじゃない!

絶対にちがう!

このーーー


「まあ、相手に

隙がなきゃいけないんですけど。

言うだけでよかったら最強ですもんね。

まあ隙っていっても、

割と何でもいいんですよ?

例えば『恐怖』とか、『脅え』とか。


でも、私はそーゆーのに向かないって

お母さんも言ってたしね……

だから、『気の緩み』を作らせちゃった。えへ。

あなたが恋愛ざたに興味があるかが

一番の難関だったけど…

心配いりませんでしたね」


わらったのだろうが

振り向けない。

体が動かない!

この圧倒的、絶対的存在感で!!!


「まあ、それじゃ、

時間も良い頃だし。




さようなら」



 便箋に映る影が、

    大きくなって、

足音が、

      こっちに、

  近づいて、

    揺らいで、

 そしてーーー




╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋╋



とある家。


そのドアの鍵が、

がちゃ、と音を立てて開かれる。

そして。


一人の女性が、現れた。


真っ赤な服を着て

真っ赤な袋を担いだ

その女性は、

意気揚々とした様子で


「お母さんへの新鮮なクリスマスプレゼント、

喜んでくれるよね!!」


そう言って、

街中の雑踏へ

姿を消していった。


その袋の中身を、

知るは、居ない。

更新復帰は聖なる夜に。

受験勉強から逃げ出す獣が、

今ここに牙を剥く!


というわけで久遠深奥と申します。こんちは。

本当にクリスマスが終わりかけてるんです。あと二時間。

間に合ってよかった……\(:○:)/banzai

今年も後少しですね。



以下、ネタバレあり?




メリーサンタが歩く町!

白い服、白い袋は伏線でした。


以下没ねた

『袋。

袋袋。

袋袋袋装袋袋袋。

袋袋装袋袋袋袋袋装袋袋袋!!』

さあ『装』って何回言った!?







正解は三回です。

読んでくれた方に感謝を!

めりー・クリスマス!!



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