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十津川圭二の場合 その2


 僕は耳を疑った、そんなまさか・・・警察官は続けてはなしだす。

「亡くなられた時間は、昨夜10時頃らしいんですよ。あなた・・・えーと・・・」

「十津川です、十津川圭二とつかわけいじです。」

「十津川さん。あなた昨日、生駒いこまさんとお会いになってますよね?その時、なにか変わった事ありませんでしたか?」

さっきまで、鈍っていた頭が一気に正気にもどった。だが、まだこの警察官の言っている事に現実味を感じない。

「はい、昨日引越しの挨拶に伺いました。僕、一昨日越してきたばかりなので生駒純さんとはその時が初対面です。」

「そうですか・・・いや、あなたを疑っている訳じゃ無いんです。一応、なにか手掛かりがあるかと思いまして。わたくし、鳴狗なきいぬ署の宇陀重吉うだじゅうきちといいます。なにか思い出されましたら、鳴狗署刑事課の宇陀までご連絡ください。」

それではといい、宇陀刑事はドアを閉め去っていった。純さんが自殺?そんな馬鹿な・・・昨日初めて会ったが、とてもそんな風には見えなかった。どっちかと言えば、自殺から程遠い感じすら見受けられたのに。

そういえば、昨日の夜の事を思い出した。純さんと話をしている時に、さくらちゃんと有希ゆきさんが来て、2人を見た純さんは酷く怯えていたな。

2人は何か言っていたような気がする、なんだっけ・・・そうだ、純さんはお寝坊するって言っていた!まさか、あの2人が・・・

そんな事ありえない、でも純さんはあの2人はヤバイって言っていた。彼女は何かを知ってしまったんだ、僕が知らないなにかを。

すると、突然誰かがドアをノックした。ビクッとして、ドアの方を振向く。

「十津川さーん、桜だよ。起きてる?十津川さーん。」

桜ちゃんだ、何をしにきたんだ。僕は躊躇とまどったが、玄関に向かっていった。僕はまだ何も知らないし、なにも話していないから。

ドアを開けると、桜ちゃんと有希さんが立っていた。桜ちゃんは手鍋を持っている、彼女はニッコリと笑って話し出す。

「十津川さん、起きてたんだよかった。お昼ごはん食べてないでしょ?おすそわけ持ってきたんだ、桜たち2人じゃ食べきれなくてさ。」

彼女の笑顔が、今は少し不気味に感じる。

「あ、ありがとう・・・助かるよ。よかったら中に入ってよ。」

2人は、お邪魔しますと言って中に入ってきた。もしかしたら、彼女達は純さんの自殺について何かを知っているかもしれない。その何かを知りたいために、彼女達を中に入れた。

「へー結構片付いてるんだね。男の人の部屋って、もっと散らかってると思ったよ。」

「私・・・男の人の部屋入るの初めてだから・・・そうなの?桜ちゃん・・・」

「片付いているって言っても、何も無いだけだよ。その辺に座ってて、今コーヒーでもいれるよ。」

僕は平静を装って、台所にむかった。3人分のコーヒーを入れて彼女達の元へ向かう。暫く他愛の無い話をして、意を決して純さんの自殺の話をきりだした。

「純さん、なんで自殺なんかしたんだろうね・・・」

ぽつりと小声で話し出すと、2人の表情が厳しくなった。やっぱり、この2人はなにか知っているんだ。そして桜ちゃんが、低い声で語りだす。

生駒純いこまじゅんは、知ってはいけない事を知ってしまったんだよ・・・それに耐え切れなくって自ら命を絶ったんだ・・・」

大人びた口調で、桜ちゃんが話す。それに続いて有希さんが、コーヒーを1口飲んで話しだした。

「そうね・・・可哀想な人だわ・・・でも、それを自分だけで留めておけば良いものを・・・他人に話そうとしてしまうから・・・ねえ、十津川さん・・・」

2人の、冷酷な眼が僕を見つめる。寒気がする・・・間違いない、この2人が純さんを自殺に見せかけて殺したんだ。僕はいまさらながら後悔してしまった、2人を部屋の中に入れた事を。

「ぼ、僕は・・・何もしらない、何も聞いていない・・・」

「ふうん・・・そうなんですか?だったら良いんですけど・・・」

有希さんが妖しく微笑む、恐ろしい・・・背筋に冷たい汗が流れる。すると桜ちゃんが、僕にグッと近づき上目遣いで話し出す。

「十津川圭二・・・あなたは本当に何もしらない?もう知っているんじゃないの?だったら・・・あなたは、生駒純と同じ結末を迎えるかもしれない・・・」

恐ろしさで頭が一杯なった、僕はそれを振り払うために大声をだして否定する。

「うあああああああああああああ!知らない!!知るもんか!!出て行け!出て行ってくれ!!」

急に大声を出されて、2人は驚いている。

「え、ど、どうしたの?十津川さん。桜たち何か気に障る事でも言った?」

「ごめんなさい・・・私、何か十津川さんの気に入らない事しちゃったのかな・・・だったらごめんなさい・・・」

何を言ってるんだ、白々しい。今更そんな顔をしたって無駄なんだ。

「うるさい、うるさい、うるうさいうるさい!!いいから出て行けっているんだ。出て行かないとぶっ飛ばすぞ!」

吉野桜よしのさくら桜井有希さくらいゆきは、眼に涙を浮かべて謝罪している。だが、そんなものはもう僕には届かない。

「ごめんなさい、ごめんなさい。ぐすっぐすっ。」

「わかりました・・・出て行きますから・・・暴力は止めて下さい・・・桜ちゃん・・・いきましょう・・・」

2人を押し出す様に、部屋から追い出した。殺されるもんか、僕は絶対殺されるもんか!

そうだ警察、警察に助けてもらおう。鳴狗署の宇陀だったけか・・・あの人に連絡を取ればなんとかしてくれるかも知れない。


 電話の受話器をとって、鳴狗署の番号をまわす。何回か通話音が流れた後、電話がつながった。

「はい、こちら鳴狗署です。」

「あの、わたくし十津川と申しますが・・・刑事課の宇陀さんお願いします。」

「刑事課の宇陀ですね、少々おまちください。」

保留音が流れて、暫く待った。そして保留音が切れて、受付の女性の声がした。

「申し訳ございません、ただいま宇陀は不在でして。また改めて、お電話お願いできますでしょうか。」

「そ、そうですか・・・わかりました。」

受話器を置いて、電話を切った。肝心な時に居ないのかよ、警察は市民の見方じゃないのか!警察は当てにならない、まごまごしていると

僕は殺されてしまうかもしれない。もしかしたら、今夜にでも・・・

落ち着かない、イライラする。そうだ、こんな時は酒を飲もう。台所からウイスキーの小瓶を持ってきて、そのまま一気に流し込む。

空きっ腹の胃に酒を流こんで、自分を落ち着かせる。大丈夫だ・・・落ち着け・・・そしてウトウトと睡魔がやってきて、そのまま眠りに落ちてしまった。


 眼が覚めると、もう夕方だった。頭が痛い・・・吐き気がする、水でも飲もう。そう思って台所に向かった時、ドアをノックする音がした。誰だ一体・・・ドアのスコープを覗くと、そこには吉野桜と桜井有希が立っていた。

「あ、あのう・・・十津川さん・・・さっきの事謝ろうと思って・・・よかったら空けてくれるかな?」

吉野桜が、俯いて話している。何をいまさら・・・そうか、とうとう僕を殺しに来たんだな。よし、むざむざ殺されるものか、やられる前にやってやる。台所に戻って包丁を取り出した、それを背中に隠し悟られないようにした。

「う、うん・・・こっちこそ急に怒鳴ったりしてごめんよ、今開けるから。」

ドアを開ける、2人は申し訳なさそうに立っていた。すると桜井有希は、ビニール袋を差し出しおどおどとしながら話し出した。

「あ、あの・・・これ・・・仲直りしようと思いまして・・・ジュース買ってきたんですけど・・・よかったら・・・」

「あ、ありがとう頂くよ・・・」

すると、吉野桜はビニール袋からジュースを取り出し栓を空けて差し出してきた。

「これおいしいんだよ!新発売のシソ入り抹茶スカッシュ。十津川さんも飲んでみて。」

シソ入り抹茶スカッシュ?なんだそれ・・・聞くだけで不味まずそうだ。

「う、うん・・・後で頂くよ・・・」

そう言って断ったのだが、彼女は缶ジュースを僕の胸元に押し付けてきた。

「今飲んでよ・・・さあ・・・」

また、あの凍る様な眼だ。彼女はグイグイと押し付けてくる、僕は後ずさって部屋の中に戻された。彼女達も、中に入ってくる。

「さあ、飲んでよ・・・さあ、さあ、さあ、さあさあさあさあさあ!!!」

これは、毒薬かなんかか。これで僕を毒殺する気なんだ・・・

やられてたまるか、やられてたまるか、ヤられてタマるか、ヤラレてタマルか、ヤラレテタマルカ・・・


ボクハ、ホウチョウヲフリカザシ。フタリニオソイカカッタ・・・


夕暮れの鈴河荘に、悲鳴が響きわたった・・・




 鳴狗署刑事課、宇陀刑事は先日行われた『鈴河荘惨殺事件』の調査をしている所だった。そこへ、宇陀の部下である黒滝くろたきがやってきた。

「宇田さん、加害者の十津川圭二の詳細がわかりました。」

「おう、クロさんご苦労様。で、十津川圭二は何者だったんだい?」

黒滝はパラパラと手帳をめくり、書かれたメモを読み出した。

「十津川圭二、21歳。無職、アルバイトや漫画家のアシスタント等をして収入を得ていたようです。彼は7月20に実家を出て、21日に鈴河荘に越してきています。実家を出た理由としては、彼は精神的にかなり病んでいたらしく。両親や、兄夫婦に暴力を繰り返していたそうです。」

「精神的に病んでいたのか・・・その原因ってのはなんだい?」

宇陀はタバコに火を付け、深く吸い込み静かに煙を吐いた。黒滝は話を続ける。

「アシスタント仲間に聞いたところ、彼は漫画の投稿を続けるもなかなかデビューができない事で悩んでいたそうです。そんな事があって気が短く、被害妄想になっていたそうですね。それに酒乱の気があったらしく、酒を飲んで仲間に大怪我をさせた事があるそうです。」

「そうか・・・被害妄想で酒乱か・・・救い様がないな・・・だが、その十津川圭二も死んじまってるからな。」

そうですね、と黒滝が言うと、宇陀はタバコを乱暴にもみ消した。

「じゃあ、クロさんは引き続き『鈴河荘惨殺事件』の方を調べてくれ。ワシは、生駒純の方を調べてみるから。」

「え、生駒純の件は自殺じゃないんですか?」

「そう思ったんだけどな。生駒純は、201号室の高田大和と不倫関係にあったそうだ。それに事件直後、高田は行方をくらませている。何か知っていると思うんだがな、ワシの刑事の勘ってやつだ。」

2人は刑事課の部屋を出て、それぞれの調査に向かっていった。宇陀は鳴狗署を出て晴れわたった空を見上げ、呟く様にいった。

「まったく・・・平和な町が血生臭くなっちまったもんだ・・・」



『鈴河荘惨殺事件』


加害者 十津川 圭二 21歳


被害者 桜井 有希 19歳 吉野 桜 10歳


事件内容 加害者十津川圭二は自室で、桜井有希、吉野桜を惨殺した。そして加害者自ら喉に刃物を突きつけ自殺している。


被害者は2人とも数十箇所による刺し傷、桜井有希は心臓まで達する傷により出血死。吉野桜は頚動脈切断による死亡、ほとんど首が千切れ掛けてた状態だった・・・



楽しんでいただけましたでしょうか?

十津川圭二が段々壊れて行く様に書いたつもりですが上手くいったかどうか・・・

残酷な描写は苦手なので書かないようにしていきますw

でも、演出上書いてしまうかも・・・

次は誰を主人公にしよかな?

それでは次回もみなさんに楽しんでいただける様に書いていきますので

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