告白
祐樹は、佳奈をまた外に連れ出した。
今度は2人きり。
祐樹は、玄関を出てすぐに手をつないできた。
祐樹「佳奈、俺とデートしよう。」
佳奈「デ、デート?」
祐樹「驚く事ないだろ。俺とじゃ嫌か?」
佳奈「そんなことないけど…」
すると祐樹は、手をつなぐだけでなく、
体を少しずつ佳奈に密着させてきた。
途中で温かい缶コーヒーを買い、
2人で飲んだ。
味が違う二つのコーヒー。
祐樹「佳奈のも味見させて。」
佳奈「いいよ。」
2人でコーヒーを交換して飲み比べもした。
佳奈は、祐樹といるだけでも充分だったが、
今日はやたら楽しかった。
何でだろう。
夜だからハイテンションになるのかな。
2人だけだからかな。
手をつないでいるからかな。
その全部かな。
とにかく楽しくて仕方なかった。
その時だった。
歩く先の向こうから、自転車に乗ったり歩いたりしている
5人ほどの集団が歩いてくるの人影が見えた。
祐樹と佳奈は、まずいと思って隠れようとしたが、
ここは田舎の田んぼの中の農道、
隠れられない。
祐樹(同じ学校の奴だったらどうしよう…)
2人は、顔を伏せて歩いた。
それでも2人は、
つないだ手を離そうとしなかった。
けれどもすれ違ったのは、高校生の集団だった。
ジロジロ見られたが、からまれもせずにホッとした。
でも、考えてみたらコソコソする必要もない。
いとこ同士が歩いてたって、そりゃ普通の話だ。
むしろ、隠れようとした方が変に見られる。
でも、なんだか祐樹も佳奈も、
自分のしてる事が後ろめたい気がした。
祐樹「ちょっと、その辺で落ち着こうか。」
佳奈「うん…」
そう言って立ち寄ったのは近所の神社だった。
そこは街灯もあって、
不気味な感じもしない場所だ。
2人でベンチに並んで座った。
祐樹は、ここで佳奈の手を離すと大きく背伸びをした。
佳奈は、その隣で腕を抱えて体を丸めて小さくまとまっていた。
そんな佳奈の横顔を祐樹はチラチラ見ていた。
祐樹「まるで、恋人みたいだな。俺たち。」
佳奈「え…、うん、そうかな。」
祐樹「なあ、恋人みたいなことしていい?」
佳奈「え、何するの?」
すると祐樹は、佳奈の肩に腕を回して、
自分の方に抱き寄せた。
祐樹「こんな感じ。」
佳奈「や、やだぁ…」
佳奈は、ちょっぴり抵抗した。
けれども、祐樹がちょっとだけ力を入れると、
佳奈は無理に離そうとはしなかった。
そして佳奈は、そのまま祐樹の方に首をもたげた。
佳奈(何してるんだろ、私…歯止めがきかない…)
自分でも、なんでこんなに大胆になっているのか解らなかった。
普通なら、戸惑って取り乱してもいいはずなのに…
祐樹の傍にいると落ち着く自分ばかり感じていた。
抵抗しないでいると、
祐樹はもっと大胆になっていった。
今度は、佳奈の前にも腕を通して両腕で抱き寄せた。
祐樹「やっぱ、佳奈は女の子だなぁ… いい匂いがする。」
佳奈「…」
佳奈は、身を委ねるだけだった。
ただ、なぜの思いはあった。
こんな事をするなんて、もしかして…とも思った。
いくら恋愛未経験な鈍感な私でも…
佳奈は思わず口を開いていた。
佳奈「ねぇ、祐君…」
祐樹「ん?」
佳奈「なんで、こんな事するの?」
その瞬間、時間が止まったかのような空気感が2人を包んだ。
祐樹は、一瞬動揺したかのようなそぶりを見せた。
少しの間、沈黙が続いた。
すると祐樹は、佳奈の髪の中に顔を埋めた。
佳奈は抵抗しなかった。
ただ静かに目を閉じていた。
そして、祐樹が佳奈の髪の中から顔を出すと、
佳奈に言った。
祐樹「俺、佳奈の事が好きだから…かな。」
佳奈「…」
佳奈は、まだ目を閉じたままだった。
それでも耳は、一瞬言葉を疑っていた。
ゆっくりと佳奈は眼を開く。
そして、かなり近いところにあった祐樹の顔を見た。
佳奈「好き…って言ったの?」
祐樹「ああ、俺は、佳奈が好きだ。」
やっぱり間違いなかった。
佳奈は、自分が告白されていたことに気付いた。
体中が熱くなってくる。
けれども、気持ちは慌てふためかない。
不思議と落ち着いたままだ。
でも、すごく嬉しかった。
自分の事を思っていてくれたことが…
祐樹「佳奈は…俺の事は好きか?」
佳奈「…私も好きだよ。だけど…」
祐樹「だけど何?」
佳奈「私たち、いとこ同士だよ。」
祐樹「それが何か問題あるか?」
そう言われて、佳奈は止まった。
佳奈「付き合ってもいいの?」
祐樹「俺はいいと思ってるよ。」
佳奈「そういう風になっていいの?」
祐樹「ダメじゃないと思うよ。」
不器用な会話だ。
でも、確かにダメじゃない。
いとこ同士は結婚出来る。
問題あるかと言われたら…ない。
佳奈「私なんかでいいの?」
祐樹「俺は、佳奈じゃなきゃダメだ。」
佳奈「……」
祐樹「今日から、本当の恋人同士。それでいいよな?」
佳奈「…うん。」
そして佳奈は、また静かに目を閉じ、
祐樹の胸の中に首をもたげた。
佳奈(何か…夢みたい…)
佳奈は信じられなかった。
けれども、現実はそうなっていた。




