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ひとつの布団の中で

散歩から帰ってくる途中、

コンビニでょっとした買い物をして、

家に戻ると、

4人は真っ直ぐ佳奈の部屋に入った。


白が基調の部屋には、

勉強机とベッド、クローゼットがあって、

フローリングには絨毯、

あとは本棚とちょっとした物置棚とかあって、

テレビも見れるノートパソコンが一台ある。

佳奈の部屋は、いたって普通だ。

ただ、空気が男の部屋とは違う。

よく片付いている。

ベッドにあるのは、ぬいぐるみだったり、

キャラクターグッズだっり。

そういうところが女の子らしかった。


佳奈と久瑠実と那南の3人は、

佳奈のベッドに端座位で横に仲良く座り、

祐樹は、勉強机の椅子に座った。


祐樹「そういえば、どうやって寝るの?」

久瑠実「決まってんじゃん。4人でベッドで。」

祐樹「そりゃ、無理だろ。」


佳奈も那南も祐樹にうなずいた。

ベッドはシングル。

佳奈と久瑠実、那南の3人までは、

体を寄せ合えば何とかなりそうだったが、

そこに祐樹までは、無理な感じだ。


久瑠実「こうすれば大丈夫だよ。」


すると久瑠実は、

両側にいた佳奈と那南を後ろに引き倒して、

自分もそのまま後ろに倒れた。


祐樹「あ。」


普通に縦に寝れば、3人が限界なベッドだが、

横に使って寝れば、充分に4人で寝る事が出来た。

盲点だったが、それに気付いた妹が、

祐樹は、少しだけ賢く見えた。


祐樹「でも、足がはみ出すじゃん。」

久瑠実「そんなのは体丸めればいいでしょ。とにかく、お兄ちゃんもこっち来なよ。」


祐樹が立ち上がると、


久瑠実「あ、電気消して。」


言われるまま電気を消すと、

祐樹はベッドに来た。


久瑠実「お兄ちゃんは真ん中ね。その左が佳奈で、右が那南。私は佳奈の隣。」


那南、祐樹、佳奈、久瑠実、

そんな順番で4人はひとつのベッドに寝た。

全ては久瑠実のシナリオ通りだ。

祐樹をそばに置いて、

佳奈の反応を見たかった。


そんな久瑠実の企みにはまったかのように、

佳奈のドキドキは尋常じゃなかった。


佳奈(どうしよう… 息が苦しい… すごいドキドキしてる…)


この鼓動が祐樹に聞こえたら…

そう思うと、佳奈の心臓は

ますます言う事を聞かなくなった。

いきなりのスタートダッシュだ。

体をどうしたらいいかも解らない。

体は密着して自由に身動きも出来ない。

ちょっとでも動けば、

手や足が変なところに触れたりする。


最初、佳奈は上を向いて寝ようとしたが、

久瑠実の「真ん中を向こうよ」という言葉をきっかけに、

佳奈は、祐樹の方を向いて横向きになった。

久瑠実は仕掛けは容赦なかった。


久瑠実「こうやって4人で寝るのは久しぶりだね。」

那南「そうだね。私が祐君と寝るのは相当久しぶりだよ。」

祐樹「確かに。一緒に寝ても、隣り合うのは久しぶりだな。」


そんな会話に佳奈は入っていけなかった。

そんな余裕はない。

佳奈の顔は、ほとんど祐樹の胸の中にうずまっていた。

佳奈の髪のところに祐樹の顔が来ている。


佳奈(変な匂いとかしてたらどうしよう…)


ちゃんと髪を洗ったよね…

ちゃんといつものシャンプーとか使ったよね。

間違って変なので髪とか洗ってないよね…

普段だったら、全くそんな事を気にしないのに、

今は、そればかり気になった。

そんな佳奈の動揺を、

佳奈の背中で久瑠実は敏感に感じ取って、

それを楽しんでいた。

本当にいやらしい奴だ。

そして久瑠実は、佳奈の背中に抱きついた。


久瑠実「私、佳奈の事抱きしめるの好きなんだよね。ものすごく気持ちいいんだもん。」


佳奈は黙ったままだったが、

久瑠実に抱きしめられるのは佳奈も嫌ではなかった。

いつもの事だし、久瑠実と触れていると、

何となくホッとした。

そういえば、祐樹も同じ匂いとぬくもりがある。

ただ、久瑠実のしたたかな企みには気付いてなかった。

久瑠実は、祐樹の男心にやらしく矢を放っていた。


佳奈(兄弟なんだよね… 私、だから好きなのかも…)


気が付くと、最初は恥ずかしくて

体が燃えるように熱くなっていたのに、

祐樹の体に触れていて、

次第に安らいでいく自分を感じていた。

心臓もいつもの調子を取り戻してきた。

けれども、そのペースを久瑠実が乱す。


久瑠実「そういえば、佳奈、おっぱい大きくなってきたんじゃない?」


なぜ、こんな場面でそんな話をする?

佳奈にしてみれば明らかにKYだった。

もちろん、久瑠実にとっては確信犯だ。


佳奈「そ、そんなことないよ。」

久瑠実「いや、佳奈は意外に大きいよ。お兄ちゃんも触ってみほ。」

祐樹「できるかアホ。」


けれども、体は密着している。

触れなくてもいいところに触れたりもする。

祐樹は、背中で那南も感じていた。

那南に声をかけたが、小さな寝息が聞こえてきた。


久瑠実「あれ、那南はもう寝ちゃったの?」

祐樹「そうみたいだな。」

久瑠実「もう、ネンネなんだから…」


少しの沈黙の後で久瑠実が言った。


久瑠実「ねぇ、お兄ちゃんには彼女いるの?」

祐樹「なんでそんな事聞く?」


聞きたい人がいるから…とは、

まだ言わなかった。


久瑠実「お兄ちゃんみたいな人を好きになる人がいるのかなって。」


ここにいる。

佳奈は首をすくめていた。


祐樹「ほっとけ。お前に心配されるほど落ちぶれてない。」

久瑠実「そっか。でも、お兄ちゃんは、いい人見つけると思うよ。」

祐樹「なんだよそれ。気持ち悪いな…」


久瑠実は、明らかに佳奈を意識していた。


久瑠実「じゃあ、私はそろそろ寝るね。おやすみ~」


そう言って、久瑠実は寝に入った。

もちろん芝居だ。

祐樹と佳奈を2人きりにするため。

しばらく沈黙が続いた。

やがて久瑠実からも小さなウソ寝息が漏れてくる。

佳奈は口を開いた。


佳奈「久瑠実、本当に寝ちゃったね。」

祐樹「ああ。」

佳奈「祐君と寝るの久しぶりだね。」

祐樹「そうだな…」


そのあとの会話が続かなかった。

でも、このまま眠ってしまうのはもったいない。

佳奈はそんな気がしていた。


祐樹「眠れないの?」

佳奈「う、うん…」

祐樹「俺も…」


すると祐樹は、起き上がってベッドを離れた。


久瑠実(ちょっと… 馬鹿兄、何やってんの?)


せっかくのお膳立てを壊されて、

寝たふりしてた久瑠実は苛立った。


佳奈「起きるの?」

祐樹「佳奈も起きてるなら、ちょっと部屋出ない?」

佳奈「え… いいけど…」


佳奈もベッドを離れた。

久瑠実にしてみれば予想外の展開だ。


祐樹「もう一度、散歩に行こうよ。」

佳奈「また?」

祐樹「うん。佳奈と2人で行きたい。」

佳奈「え…」


佳奈は、呆然としていた。

2人しかいないのだから、

2人きりでなんて言うのは当たり前なのだが、

なぜか、その言葉に特別な意味を感じてしまった。

ただ、それは佳奈だけでなかった。

久瑠実も同じだった。


久瑠実(何…この展開…)


そして祐樹は、立ち尽くしていた佳奈の手を引いて

部屋を出て行った。






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