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泊まりに行っていい?

佳奈は、従兄だけれど祐樹の事が好きだった。

でも、それを本当に認めてしまっていいのか、

佳奈は戸惑っていた。

なぜならば従兄だからだ。


従兄は結婚出来る。


…ということは聞いたことがある。

実際そうだ。

だから恋愛しても、問題はない。

でも、周りがそれをどう見るか…

けれども、久瑠実は言う。


久瑠実「うちのお兄ちゃんのどこがいいか解らないけど… でも従兄だろうがなんだろうが、好きならば関係ないよ。誰に何と言われようと、自分を貫けばいい。だって、一度しかない人生だよ。」


一度しかない人生… 

それが久瑠実の口癖であり、

その性格を象徴した。

とにかく久瑠実はポジティブだ。

考えるよりやってみる。

頭の中で考えて、ダメだとか言ってないで、

やらないより、やって失敗する方が良い。

そういうタイプだった。


恋愛だってそうだ。

久瑠実には今彼氏がいるが、

今の彼氏は久瑠実から告白して付き合っている。

過去には、告白された事もあるが、

彼氏がいない時は、その場で返事をせず、

一度デートしてから決めるというのが久瑠実のやり方だった。

人間関係だって、一度付き合ってみなければ解らない。

ダメだと思っていた人が良い人だったり、

いいと思ってた人がダメな人だったり… 

だから、久瑠実から告白したのに、

1回目のデートで気が合わず別れてしまったこともある。

久瑠実も同じ中一だが、

恋愛経験は豊富だった。

だからこそ、久瑠実が言う事には説得力がある。


それから、話はまた泊まりに行く件に戻った。


久瑠実「じゃあ、今夜は私が佳奈の家に泊まりに行くよ。」

佳奈「え、いいけど… お兄ちゃんの友達も来るよ。」

久瑠実「いいよ。楽しそうじゃん。」


佳奈と久瑠実がお互いの家に

泊まりあうのはしょっちゅうだった。

ただ、佳奈は家の家事をしている関係で、

久瑠実が佳奈の家に泊まりに行く方が多かった。

お互いの家なら、親も許してくれた。


佳奈「久瑠実が構わないならいいけど…」

久瑠実「あと、那南(ななみ)も誘おうよ。また3人で集まろう。」


那南は、山口那南と言い、

佳奈と久瑠実の再従姉妹(はとこ)に当たる。

佳奈や久瑠実と同い年で、

家も近く、昔からよく遊ぶ幼馴染みだった。

3人は、お互いで仲良し3人組を自認していて、

何かと言えば3人でよく集まって行動していた。

佳奈の家の近所には、山口家関係の親戚が多かったが、

その山口家でも那南は、総本家の娘であった。


性格は、おとなしい佳奈よりもずっとおとなしかった。

自分から話しかけるタイプではなく、

話しかけられなければ、ずっと無口で終わる、

そんな娘だった。

何事にも引っ込み思案で、

その点は久瑠実とは正反対。

だから、逆に合っているのかも知れないが。

勉強は3人の中では一番できた。

運動などはあまり得意ではないが、

何事も黙々とやるタイプで、

最終的には、何事も無難にこなしているという感じだった。

那南は、同じ中学校でも、

佳奈や久瑠実の2組ではなく1組にいた。


那南「いいよ。たぶん、大丈夫だと思う。」


那南もOKだった。

こうして、2人が佳奈の家に泊まりに来る事になった。



佳奈は、部活に入っていない、

いわゆる帰宅部だ。

家の事情で家事をしなければならないので

部活はしていられなかった。

授業が終わると、そのまま帰る途中に

近所のスーパーに買い物に寄った。

その時だった。


「よ! 佳奈、買い物か?」


聞きなれた声がして振り向くと、

そこに立っていたのは祐樹だった。

たまたま祐樹も学校帰りに

スーパーに買い物に来ていたのだった。


佳奈「あれ、祐君、今日部活は?」

祐樹「部活って言っても写真部だからな。運動部の奴らと違って、自由だし、のんびりしてるよ。」

佳奈「そうなんだ…」


祐樹の部活は写真部だった。

主な活動は写真を撮る事だが、

月一回の学校の壁新聞発行などをして活動している。

佳奈は祐樹が好きだった…と言っても、

祐樹を目の前にしてドギマギする事はない。

むしろ、一緒にいるとホッとするのが祐樹だった。

いつまでも一緒にいて安心出来る、

そんな存在だった。


祐樹「佳奈は、何の買い物? 今日の夕飯?」

佳奈「うん。今日ね、お兄ちゃんの友達と、久瑠実と那南が泊まりに来るの。」

祐樹「そりゃまた大勢だな。みんなで約束してたの?」

佳奈「ううん。全くの別だよ。お兄ちゃんは勝手に友達を家に呼んで、久瑠実と那南は、私のところに泊まりに来るだけ。ただ、たぶん久瑠実の性格から言って、みんなで大騒ぎになると思うけど…」

祐樹「なんか楽しそうだな。俺も泊まりに行こうかな。」

佳奈「え?」


この言葉には、さすがに佳奈もドキッとした。

別に祐樹が泊まりに来ることは珍しいことではない。

久瑠実ほど頻回(ひんかい)ではないが、

幼い時から、久瑠実と一緒に遊びに来る事は度々あった。

けれども、今朝はあんな話があった後だ。

佳奈が中学生になってからは初めての事もあって、

さすがに佳奈も、これには意識した。


祐樹「それとも、俺まで行ったら、夕飯作るの大変か?」

佳奈「ううん、そんなことないよ。一人増えたって大して変わらない。」

祐樹「じゃあOkでいい?」

佳奈「…うん、いいよ。」


嬉しいけど恥ずかしい…

そんな感じで「うん」と佳奈は言っていた。

祐樹が来る… 

そう決まった瞬間に

佳奈の中のスイッチは入れ替わっていた。

とりあえず、味は無難にして量だけ用意すればいいという方針から、

「おいしいものを作らなくちゃ」と意識が変わった。

もちろん、その意識が祐樹にあったのは言うまでもない。


佳奈「祐君、何食べたい?」

祐樹「え、俺が決めていいの?」

佳奈「うん。今日は祐君の好みに合わせる。」

祐樹「マジで? 嬉しいねぇ。じゃあ、今夜は…」


それから佳奈は、祐樹との買い物を楽しんだ。

祐樹が、「これ作れる?」と聞いた時に、

「うん、作れる!」と答えられる自分が嬉しくて、

答えた時に祐樹が笑って喜んでくれるのが幸せだった。

買い物は予定の予算も時間もオーバーしたが、

佳奈にしてみれば、もっと買い物していたい気分だった。

祐樹は、荷物持ちをして佳奈を家に送り届けてから、

支度のためにいったん家に帰った。


こうして、長い夜が始まろうとしていた。








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