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帰りの新幹線、忘れないようにと、出来事と出会った人たちの名前をスマホに打ち込む。
長浜の駅に着いて気づいた。
扇子のことは、祖母に聞けば何かわかるのではないか。
改札を出ると、父がいぶかしげな表情だった。
「どうしたんだ。いつもなら結果を教えてくれるのに。帰りの電車の時間だけなんて」
「え。ああ、今日は勝ったよ。それよりお父さん、おばあちゃんの家って車でどれくらいなの?」
「勝ったって……。今日って三段リーグじゃなかったっけ?」
「そうだよ。それよりおばあちゃんの家って――」
彩名が普段何よりも気にかけているのが対局の、特にリーグのことだった。
何より厭わしく思っていたのが、祖母との関係だ。
娘の真逆の態度に、父が戸惑わないはずもない。
「急いだって二時間はかかるぞ。これから渋滞の時間だし。それにいくらおばあちゃんだって、急に来られたら迷惑だろ」
「そっか。だったらお父さん、これのことは何か知ってる?」
助手席に座り、リュックから扇子の袋を取り出すと、父は運転席から横目で確認した。
「この前、おばあちゃんがくれたやつか。さあ、お父さんも初めて見たけど」
「うちって高貴な家系なの?」
すると父はあきれたように笑った。
「仮にそうだったとして、お父さんの給料が上がったり、彩名が強くなったりするわけじゃないんだぞ」
「そんなことはわかってるけど」
家に戻ると、改めて両親から次の日曜を待つよう説得された。
仕方ない。それまでに調べられることもあるだろう。




