7-1
文に示されていた宴会の日付は五日後だった。
伏見は、そのことを知って以降も普段通りに振る舞っていたが、綾が寝ついた頃合いを見計らって、これまでほとんど話したことがないはずの、義兄の部屋に足を運んでいる姿を何度か目にした。
どうやら将棋について、教えを請おうとしているようだ。
綾が敗れれば四辻の家に入ることになり、そうなれば彼女自身が僧侶と対戦するしかないと考えているのだろう。
もちろん、そんな事態には絶対にならないという確信があったが、あえて好きにさせることにした。
必死に駒の動かし方を習う、普段の彼女からは想像もできない愛らしい姿を目にしてしまったからだ。
隣室から、初めてそれを覗き見たときの名前のわからない悦楽。もし綾の体が成人であれば、それを肴に浴びるほど酒を飲めた気がする。
大納言との対局の日を迎えた頃には、将棋の難しさを、その身をもって認識していたようだ。
車に揺られながら、落ち着かない様子だった彼女は、やがて心配そうに口を開いた。
聞く前から、おおよそ内容の予想はついていたが。
「綾様。もしですが、本日、その、勝負に負けてしまった場合、なのですが――」
「ええ。もはや一緒には帰れない、ということでしょう?それは理解しています。お前には世話になりました」
「あ、いえ。やはりそうなるのですよね……」
本気で落ち込む姿に萌え死しそうになる。
どうにか笑いを堪えようとしたが、到底無理だった。
「馬鹿ね、そんなわけないでしょう」
「そんなわけない、というのは……」
「今、お前が想像した両方です。負けることも、離れることも。どちらも、わたしの出自に賭けてそうはならないと約束するから」
いつもなら、何か軽口を返してもおかしくない場面だったが、彼女はただ視線をそらせ、それから、かすかに頬を桜色に染めた。




