5-1
数日後、文が届いた。
伏見がしずしずと現れ、「正親町殿からです」と差し出し、すぐに姿を消した。
中将の名を聞いた瞬間、うれしさを感じたが、香りも花も付いていない一片の紙。あんなことがあってすぐの相手から、浮かれた手紙が届くはずもない。
折られた和紙を開いたが、上下以外何もわからなかった。
彼女がすぐにいなくなったことが腹立たしい。
「伏見。いるのでしょう?」
しばらく間をおいてから、彼女はやってきた。
「お呼びでしょうか?」
「わたし、お前という人間を信用していいんだよね?」
「仰る意味がわかりかねますが」
「もういいから。これ、何て書いてあるの?」
封印もない時代、どうせ先に読んでいるはずなのに。
それでも彼女は端から目を通し、わざとらしく時間をかけた。
「何が書いてあるの?」
「歌もございませんし、どう前向きにとらえましても恋文ではないようです」
「誰もそんなこと聞いてない」
それから、彼女は表情を暗くした。
内容は三条の葬儀についてだと言う。どうやら恋文のくだりは、彼女なりに彩名の気を紛らわせようとしてくれたようだ。
「綾様が参列される必要はございません。文は単なる儀礼的な知らせにございます」
あとから知ったが、殺されたのは彼の二つ下の実弟だったそうだ。
その心中は想像もできない。
力も富も武士たちに牛耳られている状況で、名誉と官位だけしか持たない貴族にできることなど、ほとんどない。そして、そんな簡単な真実をあんな形で突きつけられた中将は、どれほど絶望しているだろうか。
胸がざわつく。
悲しみというよりは、同年代の彼への同情か。あるいは、悲劇の根源が将棋であったにもかかわらず、助けることができなかったことへの後悔かもしれない。
たった二度の邂逅だったが、この世界で唯一近い年齢の知り合いだ。できることなら力になりたかった。




