10 土の精霊
「次は土の居る山が近いか」
「その後は日の居る山、金の洞窟」
「近いと言ってもかなりな距離だな」
ここまで来るのにも既に年単位かかっているが、日の山までは軽く1年以上かかりそうだ
「その山へ行くなら海を渡る必要が有るんやけど、ドワーフとオークじゃ船に乗れへんからなぁ」
「船に乗せてもらえないの」
「基本、人間以外は争いの種になるので乗せないらしい、狭い所に長い間一緒にいなければいけないからなぁ、オークは非常食で連れて行く場合も有るらしいが」
「自分で船を作ってわたるのはどうだ」
「船を作るくらい問題ねぇが、航海士が居ねぇーと遭難間違いなしだな、それに俺は船は嫌いだ、足元が地面じゃないと落ち着かん、ほかにルートは無いのか」
「東の山脈を抜けて回り込めば行けるけど時間がかかる距離やね」
「仕方ない、時間はかかってもそっちに回るか」
精霊の木を離れ東へ向かう
力を増す魔法をかけて斧を振るうと大きな岩も真っ二つに切れるし斧の背で叩き割れば粉々に砕け散る威力になる
「凄なぁ、これなら鳥型の魔物もあっという間に狩れそうだな」
「ゴーレムが出ても安心やわ」
「あれ、ボブはいつ戻ってきたんだ」
「今です」
ボブは相変わらず町と俺達を行き来している。
どれくらい歩き続けだろう、とてつもなく広い森だがとうとう端へたどり着いた。
「良い物を手に入れたんですよ、世界地図です」
「そんなものが有るなら早く手に入れろよ」
広げてみると
「大雑把だな」
「間違い無いのかこれ」
今まで歩いてきた森が隅にあり砂漠や山脈、町などが示されている。
「目的の山はどこなんだ」
「この辺やな」
「遠いなぁ、砂漠も超えて行かなきゃいけないのか」
「ダイの水魔法が有れば問題ないだろ、氷も作れるしな」
「浄水器&製氷機 みたいな扱い?」
「食料は多めに持って行った方が良いな」
「ワイが定期的に届けてやるさかい問題ないやろ」
「そうか、便利だなその移動アイテム、」
「カイさんらが移動してくれるさかいリスクなしでワイの移動できる範囲がドンドン広がって、それだ けでもひと財産や」
「それに加えて精霊との直接契約、武具の商売とあんたらと知り合えてめっちゃラッキーやで」
「まあ、俺達も色々と供給してもらえるのは便利だからな」
「なんかチョット考えたらボブの方が得してるよね、もしかしたらすでに億単位で」
「そ、そないな事は考えないでほしいわ、友達なんやから」
「そうだな、何かあったらボブを頼るよ、せいぜい金貯めて、地位も名誉も得ておいてよ」
「了解や」
「さてと、山脈を越えて砂漠を超えれば目的の山だな」
「簡単に言うが、えらく遠いな」
森を抜け山脈へ入る
険しい山道だ
カイが足を滑らせて20メートルほどの崖を転がり落ちた
俺はびっくりして駆け下りて、倒れているカイを抱き起す
「カイ、カイ、起きろ」
回復魔法をめちゃくちゃかけてやる
カイがそっと目を開ける
「ダイおまえ、泣いてるのか」
「大丈夫なのか」
「死ぬかと思ったぜ」
落ちながら夢中で防御力アップの魔法を重ねがけしたのだという
「良かった、良かった」
「そんなに泣くなよ」とカイが笑う
自分でもビックリするくらい涙が出た
死んでしまったのではないかという不安
助かったという喜び
こんな危ない事させてしまった後悔
もっと慎重にするべきだったとの自責
色々な感情が溢れ涙が止まらない
しばらくして落ち着きを取り戻した俺
自分では気付いていなかったがカイの事が大切な人になっていた
チビでデブ、毛深くてスケベなカイ、こっちの世界に来て…
「カイにとって俺ってどういう存在なんだ」
自分にとってどういう存在なのかわからずカイに聞いてしまった
「何だよ今更、仲間だろ」
「仲間か、種族も違うのに」
「そんな事は関係ないだろう、お前は仲間でペットで友達で好きな奴だ」
「ありがとう」そう言って抱き着く
崖の上から落石、危うく潰されるところだった
「ここは危ないな、先へ進もう」
「危ないし、旅はもうやめようか」
「何言ってるんだ、こんな面白れ―こと辞めれるわけないだろ、お前は俺のペットなんだから考えすぎないで付いてくればいいんだよ」
「でも、下手すれば死んでたいんだぞ」
「つまらん生活で長生きするより面白い事をやって死ぬ方が俺は良い、俺が死ぬのは俺の勝手でお前が気にする事じゃない」
「お前が死んだら俺は嫌だぞ」
「だったら、守ってくれ、とにかく俺は楽しいぞ、お前と旅をして、面白い事ばかりだ、まさか精霊と契約して魔法が使えるようになるなんて誰が想像した、ドワーフが旅をするのだって珍しいんだ、ましてやオークと一緒なんて、それだけでも普通じゃねぇーんだ」
「いいのか」
「いいさ、いつ死んだって悔いはねぇ、一生分楽しんだし、これからもっと楽しい事が有るかもしれない」
「こんな山登りとか、砂漠越えとか辛くて大変だよ」
「お前と一緒なら楽しいよ」
そう言いながら尻尾を愛撫する
「こんな所で、危ないよ」
「お楽しみは後でだな」
俺達は勃起したチンコを隠しもせずに山を登っていく
数か月かけて山の向こう側へ出た。
凄い眺めだ、果てしなく山が連なっている
「山が繋がってるな」
「景色としては良いけど、超えるとなるとため息しか出ないな」
「まぁ、しょうがないさ、この道しかないんだから」
「遭難しそうだな」
道なき道を進んでいく、時には斧で道を作る事も有った
山の中にも魔物は出現する飛行系などは倒しても谷間に落ちるので食料に出来ず補充が難点になってきた。
斧で山肌を削って行くと大きな穴が現れた
「鍾乳洞か?」
「でも見てみろ、階段になってるぞ、人工物だ」
「誰がこんな所を掘ったんだ」
「風が有るな」
「入ってみるか」
「迷わないように何か印が必要だな」
「松明も必要だな」
「もうすぐあいつが来るだろう、それまで奥に行くのは待った方が良いな」
「来るまで、ここで待つか」
少し中へ入ったところへ腰を落ち着ける
久しぶりにゆっくりとした休憩が出来る。
「やっぱり天井や壁がある場所は落ち着くな」
「そうだな、警戒するのも限定的だから楽だな」
「逃げ道も限定されるんだけどな」
カイは俺を肉布団にして寝る。体温が心地よい。
少しだけ中に入って様子を見ては戻るを繰り返し奥を探る
魔物がいる様なので生活できる環境ではあるようだ
「ここはどこなんや」出て来るなり声を上げるボブ
「山脈の中の洞窟」
「ハァ―こんなんがあるんや」
「チョット思ったんだけどさ、俺達が岩壁を上ってるときにこっちに来たら、そのまま谷底へ真っ逆さまだよね」
「その時は、すぐに町へ戻ります、しかしタイミング次第では即死も有りますね」
「けっこ―リスキーだな」
「ハイリスク、ハイリターンちゅうやっちゃ、ワイは自分の運を信じてるんや、めったな事では死なんよ」
「運なんて、そんな根拠のない物を信じるんだ
「松明あるか」
「有りまっせ―、「戻り砂」も有った方がええなぁ、運は大事でっせぇ」
「「戻り砂」って何」
「入口に戻れる砂や、迷ってどうしようもない時に使うと、ふりだしに戻れるんや」
「そりゃあ便利だな」
「それと「カナリア草」、これは毒ガスや酸素の薄い所に行くと大きな音で知らせてくれるんや」
「用意が良いな」
「こういうアイテムは鉱山労働やダンジョン攻略やらで一定数の需要があるんや、せやから常時用意してますのや」
「うちの里でも使ってたな」
「これだけあれば大丈夫だろ」
カイと二人で洞窟探検に出発する
洞窟は広く意外と歩きやすい、道は少しずつ下っている
時々魔物と遭遇する
蝙蝠や蛇、蜘蛛が多いが、たまにゴブリンなども出現する
鉱石やレアメタルなども有りカイが喜んでいた
「どれくらい経ったかな」
「そろそろ夜だな、どこかで寝る準備をするか」
「なんでわかるんだ」
「なぜって、腹の減り具合とか大体の感覚だよ」
「そうか、ドワーフって洞窟に住んでるんだもんな、こういうのはお手の物なんだ」
「今更か、わし一人ならアイテムなしでもなんとかなるがな、お前がいるからな」
魔物を倒しつつ洞窟を進む、迷っても簡単に帰る事が出来ると思うと気が楽だ、迷路のような道をどんどん進む、山を進むよりもずいぶん楽だ
途中でボブが物資を供給してくれ何か月が経った、洞窟は螺旋のように回り地下へ進んでいった
魔物はゴーレムの様な岩系が増え、手強い割に食料にはならず倒し甲斐いがない
ひときわ大きなゴーレムを倒すと大空間が現れた。中心から光が溢れだす
「我は土の精霊、よくぞ迷宮を抜け辿り着いた、加護を与えよう」
光りが体へ吸い込まれていく。
「ボブはもらえなかったな」
「いきなり出てきたもんな土の精霊」
「ロックブラスト、ロックウォール」
「ロックアーマー、ロックソード」
攻撃と防御の魔法だな
「ロックウォールは寝る時に便利かもな」
道は登りになり出口へと続く予感
数か月かけて山脈の向こう側へ出る事が出来た
「やっと外に出た」太陽が眩しい




