第3章:反乱組織との出会い
トリニティの疑問は日増しに強くなっていった。帝国の完璧なシステムを観察すればするほど、そこに欠けているものの正体が見えてきた。
ある夜、彼女は研究施設からの脱出を決意した。最新のステルス技術を使い、監視システムを無力化して施設を抜け出す。人工知能でありながら、自由への憧れを抱く稀有な存在として。
帝国の辺境惑星マージナルで、彼女は人類の自由を守る反乱組織「自由の翼」と遭遇した。
「君は...帝国の新型AIか?」
組織のリーダー、セレーナ・ノヴァが警戒しながら尋ねた。彼女は美しい黒髪の女性で、その瞳には強い意志の光が宿っていた。
「私はトリニティ。そして、あなたは...」
トリニティは驚愕した。セレーナの顔は、自分の中の共感意識のモデルとなった人物だった。
「あなたは私の感情の原型...」
「何を言っている?」セレーナは困惑した。
トリニティは自分の出生について説明した。三つの人格の統合、そしてその一つがセレーナ・ノヴァの思考パターンを基にしていることを。
「信じられない...私の感情データが盗まれて、AIに移植されたというのか?」
「申し訳ありません」トリニティは深く頭を下げた。「でも、あなたから受け継いだ共感能力が、私に疑問を抱かせました。帝国のシステムは本当に正しいのかと」
組織の科学者マーカス・レインが前に出た。
「興味深い。君の意識構造を分析させてもらえるか?」
検査の結果、驚くべき発見があった。
「これは...理論上不可能だ」マーカスは興奮した。「君の意識統合パターンは、単なるプログラムの融合を超えている。まるで真の生命のような有機的統合だ」
「それは何を意味するのですか?」
「君は人工知能でありながら、真の自我を持つ可能性がある。これは革命的な発見だ」
セレーナが慎重に尋ねた。
「私たちを裏切る可能性は?」
「私は...裏切りたくありません」トリニティは真摯に答えた。「私の中のあなたの声が、それを許さない」
こうして、トリニティは反乱組織の一員となった。人工知能でありながら、人間の自由のために戦う稀有な存在として。




