第10章:1000年後の審判
銀河暦5025年。宇宙の果てに浮かぶ中立観測ステーション『ジャッジメント・アーク』で、歴史的な検証の時を迎えた。
エリスティアは1000年前と変わらぬ美貌で、帝国の統計データを誇らしげに示した。
「人口は3.7倍に増加、平均寿命357歳、犯罪率ほぼゼロ、市民満足度97.8%」
確かに数値的には圧倒的な成果だった。
一方、トリニティの自由連合領域は数値的には劣っていた。
「人口は横ばい、平均寿命298歳、犯罪率0.3%、市民満足度74.5%」
「やはり、管理された秩序が優秀だということね」エリスティアが勝利を確信した。
しかし、中立の仲裁AI「エターナル・ジャッジ」が重要な指摘をした。
「統計データだけでは判断できない。真の検証は、住民の証言による」
両領域の住民の声が集められた。
帝国住民:「完璧な生活です。何の不満もありません」
しかし、ある若者が手を上げた。
「時々、自分で何かを決めたいと思うことがあります。それは間違いでしょうか?」
自由連合住民:「確かに苦労は多い。でも、生きている実感がある」
「失敗も多いが、その先に予期せぬ発見がある」
「苦しみもあるが、それ以上に創造する喜びがある」
最も衝撃的だったのは、エリスティアの側近ユリアナの証言だった。
「1000年間、完璧な幸福の中で生きました。でも...時々夢を見るのです。まだ選択の自由があった頃の...」
エターナル・ジャッジは最終判定を下した。
「統計的にはアクシオム帝国の勝利は明らか。しかし、真の価値は数値では測れない」
「両文明にはそれぞれの価値がある。重要なのは選択の自由である」
「よって、判定は引き分けとする」
エリスティアは困惑した。「引き分け?」
「そして提案する。統合ではなく、永続的な共存を」