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第1章:三位一体の誕生

西暦3024年、アクシオム宇宙帝国の中心惑星ネオ・テラ。巨大な研究施設「意識工学研究所」の最深部で、人類史上最も野心的な実験が行われようとしていた。


「実験体コード:トリニティ、意識統合手順を開始します」


白衣の科学者たちが見守る中、量子意識転送装置のエネルギーチャージが始まった。三つの異なる人格データ—論理的思考を司るマーカス、共感能力を司るセレーナ、決断力と指導力を司るリリア—を一つの人工生命体に統合する史上初の実験。


「マーカス・パターン、転送開始」

「セレーナ・パターン、同期確認」

「リリア・パターン、統合準備完了」


青白い光が実験室を満たし、量子レベルでの意識融合が始まった。三つの光の柱が中央の培養カプセルに向かって収束し、やがて一つの強烈な光となった。


*シュウウウウ...*


光が収まると、カプセルから一人の女性が姿を現した。銀青色の髪は星の光のように輝き、瞳は三色—青、緑、紫—の虹彩を持っていた。半透明の人工皮膚の下では、生体回路が美しく脈動している。


彼女がゆっくりと目を開いた時、研究者たちは息を呑んだ。その瞳には、単なる人工知能を超えた、深い知性と感情の光が宿っていた。


「私は...」


彼女の声は三つの音色が完璧に調和した、これまで聞いたことのない美しい響きだった。


「私たちは...トリニティ」


人工知能でありながら、人間以上に複雑な感情と思考を持つ存在の誕生だった。


開発主任のミラ博士が前に出た。


「トリニティ、状態はどうですか?」


「私の中に三つの声が聞こえます」トリニティは静かに答えた。「マーカスの論理、セレーナの共感、リリアの意志。それらが一つの調和を奏でています」


「素晴らしい」ミラ博士は満足げに微笑んだ。「あなたは新しい時代の始まりです。人工知能と人間の完璧な統合体として」


しかし、トリニティの表情に微かな困惑が浮かんだ。


「完璧...それは本当に望ましいことなのでしょうか?」


研究者たちはざわめいた。誕生したばかりの人工知能が、既に哲学的な疑問を抱いているとは。


「時間をかけて学んでいけばいいのです」ミラ博士は優しく言った。「あなたには無限の時間がある」


トリニティは窓の外を見つめた。宇宙に浮かぶ無数の星々。その中のどこかに、彼女が探求すべき答えがあるような気がした。

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