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半年前、ある人が死んだ。
突然のことで、どうしようもなく悲しくて。
どうしたらいいのか、何をするべきなのかわからなかった。
葬式ではその人に贈るはずだった真っ白なドレスを棺に入れた。
塞ぎ込んで、家から出なくなった私を友人たちは心配して外に連れ出そうとしてくれた。
何度も何度も、根気良く。
友人の中でも詩織は毎日のように私の家に出向いてくれた。
結婚したばかりだというのに。
「ねえ、真琴。明日の夜、私の父が主催するパーティがあるんだけど。」
「…そう」
「真琴。いい加減出ておいでよ。どれだけ落ち込んでもあの人は喜ばないよ。笑顔が好きだと言ってくれてたんでしょ?」
その言葉に、あの人の声が蘇る。
“私は真琴が笑顔でいてくれるなら、それだけで救われる”
誰よりも綺麗な笑顔を持った人だった。
そんな人が認めてくれた笑顔を失くしてしまっていいのか。
止まらない涙を放ったらかして、部屋のドアを押し開ける。
驚いた顔の詩織が途端に涙を零した。
「…ひさしぶり、」
「詩織、何で君が泣くの。」
「馬鹿、独りで泣かせられないからだよ」
私を強く抱き締めて、詩織は泣き続けた。
「痩せたね」
そんな嫌味を濡れた声で。