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六話

カフェ、ラ・ポーズ。

俺たちはそのカフェにいた。


この場には、ただ音楽が流れているだけで、俺たちの話を邪魔するようなものは何ひとつなかった。


「ハーレムか?いいご身分じゃないか、悠二」


……この人以外は。 

彼女の名前は新田千紗、身長が175センチくらいの巨人だ。


女性版のイケメンというべきような風貌と仕草をしていて、実際に学生時代には女子にモテて男子にはモテるどころか敬遠されていたらしい。


「……違うよ、少し騒がしくなるかもしれないけど…いい?」


俺はため息を吐きつつ、一応、許可をもらった。


「おう、騒げ騒げ。どうせこの時間帯には誰も来ないだろうしな」


千紗さんは、夜にバーを営んでいてどちらかというとそっちの方が本業である。


夜には客が大量にくるが反面、カフェを営んでいる時間帯に人は全くと言っていいほど来ない。閑古鳥が鳴いている。


俺たちは一番大きいテーブル席についた。


「さて、新田くん。昨日のこと、説明してもらうよ」


開口一番に大村さんが喋り出した。

やはり気になるのだろう。狙っていないとはいえ、結果として焦らしたような感じになったのだから。


俺は千紗さんにコーヒーを注文してから答えた。


「まず最初に、俺は彼女がいない。それどころか彼女がいたことがねぇよこんちくしょう」


前提としてそうなのだ。


「でもあなたの妹さん……亜美さんとは密接な関係なのよね?」


「いや言い方。仲がいいことは認めるが」


「私とお兄ちゃんは、兄妹ですよ。……でも、いえ、なんでもありません。私たちは《仲のいい兄妹》であって、それ以上の関係はないのですよ」


亜美は少し悲しげな笑みを浮かべる。


「……そう、ならこの話は終わりね」


佐野さんはどこか納得したような風でこちらを見た。


「新田くん、あなたはどうなの?」


……?佐野さんは何を言っているのだろうか。

さっきもそうだ。昨日はあれだけ弁明しても、信じたり、納得するようなことはなかったのに、今回はすんなりと納得した。しかも、弁明の段階にすらほとんど入っていないのにだ。


「どうって、どういうことだ?」


やっぱり考えても質問の意図が伝わってこない。

どうしても分からないの聞いてみた。


「それはあなた自身が気づかないといけないことよ。……そうね、分からないなら分かるまで待つわよ」


「だからどういうことだよ!」


俺ははっきりとしない佐野さんの言い方に声を荒げてしまった。


「……すまん」


「い、いえ、いいのよ。今回は私が悪いと思うし。でもね、それでもさっき言ったことはあなた自身で答えを見つけなくてはならないの。それだけよ」


「……そうか」


あまり釈然としない俺をよそに、それまで黙っていた大村さんが抗議の声を上げた。


「ちょ、ちょっと待ってよ!私はまだ納得していないんだけど?」


「由紀、もしかして…分からなかったの?」


佐野さんが大村さんにマジかよこいつ、みたいな顔を向けている。


「わ、私が分かるわけないじゃん!どういうことか説明してよ、私は頭良くないから言ってくれないと分からないんだよ」


「はぁ、こっちに来なさい」


こめかみを押さえながら疲れたように大村さんにいう。

大村さんは理解していない表情を浮かべつつも佐野さんのいう通りに佐野さんに耳を貸す。


佐野さんはゴニョゴニョと大村さんに何かを言っている。

何を言っているのか分からないが、おそらくはなぜ佐野さんが納得したのか、だと思う。


そして俺たちは佐野さんが大村さんに伝えて終わるのをじっと待っていた。


「え!?そ、そうなんだ…なら私たちが新田くんに言うことはないね」


大村さんは佐野さんの話に納得し、賛同したようだ。


「新田くん、少しの間、妹さんを借りていいかしら」


佐野さんは伝え終わったあと、俺にそう言った。


俺は亜美の方を見て――

「ああ、いいぞ。……俺はもう帰った方がいいか?それとも残った方が……」


「いえ、まだ日は落ちてないし大丈夫よ」


「わかった。亜美、じゃあな」


「はい、また今度」


「二人も、じゃあな。気をつけて帰れよ」


俺は別れの挨拶をして、コーヒーを飲んでから一人帰宅した。

コーヒーは冷えていた。 


……なんで二人は亜美だけ残したのだろうか。

それだけが少し気になるが、今日を乗り越えられたことに俺は深い安堵の息を漏らした。



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