11話
そういえばブックマーク1000人突破しました。
ありがとうございます!
テイク2!
また気を失った俺はそこでようやく意識を保つことに成功したぞ!やったね。
俺たちは生徒会室のソファに腰掛けて、先輩の話を聞く。
「ええと、先輩は誰ですか?」
「俺は大村万智という。一応この学校の生徒会の生徒会長をしている」
この人生徒会長だったのかよ!?
明らかに人選ミスだろ。
「……ん?あれ、苗字が大村ってことは…」
俺は大村さんの横を向いた。その動作はまるで油が刺されていない壊れた機械のようだったと思う。
大村さんはこちらに気づいてこてんと首を傾ける。
どうやら俺たちの話を聞いていなかったようだ。
「む、知らなかったのか?そこにいる天使は俺の妹だぞ」
「え”」
今日イチで驚いた。大村さんを天使って言ってるしシスコンかよ。二つの意味で驚いたよ。
俺が絶句している間にーー
「言ってなかったのか、由紀」
「うーん、今までいう場面はなかったから…多分いってないかな?ごめんね、新田くん。てへ」
「言っといてほしかったなそういうの」
最初から知っていたら気絶することはなかったんじゃないかな……
「あー、ところで……なんで僕らを呼んだんですか?」
初手のインパクトが強すぎて頭から離れかけていたため今になってようやく思い出したので聞いてみた。
「おお、そうだったそうだった。同志がこんなところにいるとは思わなかったからさっきまで忘れていたぞ。……単刀直入にいうぞ、新入生との交流会で生徒会側として参加してくれ」
よかった俺に問題があって何か言われるとかそういうのじゃなくて。
この学校の交流会は学校全体を使って行う盛大なもので、人気のある行事だ。
「嫌だよ、万智たち生徒会だけでやればいいじゃん」
生徒会長の頼みを即答で拒否した!というか兄のこと名前で呼ぶ感じなのね。
「お、大村さん?引き受けてもよかったんじゃ?」
手伝いだから裏方だろうし……
「ううん、万智のお願いは大抵度が過ぎてるものなんだよ。経験でわかる……はぁ」
大村さんが昏い目をしている。あんなに普段元気溌剌って感じなのに。
その大村さがこんなことになるって一体どんなレベルなんだよ。
「いや、今回はそんな難しいことじゃないぞ。ただ裏方と新入生への挨拶をすればいいだけだ」
な、簡単だろ、とでも言いたげな顔でこちらをみてくる万智さん。
これ割と簡単だとおもうけど割と難しいし、精神面で疲弊するんだよな。
「そ、それならいいんじゃないかな?大村さん」
「うーん……わかったよ。ただこれだけは言っておくよ。私たちがやるのはそこまで、追加で何か付け足しても拒否するからね」
大村さんは万智さんに指をさして忠告する。ただ大村さんがやる気になってくれたようだ。
「おお、そうかそうか。やってくれるか、ありがとう。これで頭数が揃ったな。実は生徒会メンバーが二人怪我してしまってな……残ったメンバーだけでは支障をきたしてしまうところだったんだ」
「そんなに大きな怪我だったんですか?力仕事はともかく事務仕事「ジム!!」……はできると思いますが」
万智さんは『ジム』という言葉に異常な反応速度で叫びだした。筋肉にどれだけ執着しているんだよ。
万智さんはそれまでの狂気的な表情を収め、真剣な顔で言った。
「生徒会の二人は筋肉断裂で絶対安静だそうだ。無理なトレーニングをするからだな全く……」
この生徒会はもしかして全員脳筋なのかもしれない。
「そ、そうですか。大村さん、なんというか……大丈夫?」
「正直まだ不安だけどね……まあ、やるからには全力でやろうね!」
「うん、頑張ろう。大村さんがやる気になってくれて嬉しいよ」
「ーーえ?」
……?なんでだろう。なんで嬉しいって感情が出てきたんだろう?
大村さんの顔は少し赤らんで、軽く放心状態になってしまった。
いきなりこんなことを言われても何言ってんだこいつみたいな感じになるだろう。
そうして変な空気になってしまったのをみかねたのか、万智さんが口を開く
「そういえば、新田。俺たちはどっちも大村さんだが……由紀のことを名前で呼ばないのか?」
「え?い、いやあ……万智さんのことは名前で呼んでいるし、問題ないのでは?」
なんか名前で呼ぶのは気恥ずかしいし…
「いや、これから作業していくうちに名前を呼ぶことがあるだろうし、名前で呼んだほうがいいだろ。どっちも反応してたらキリがないしな。由紀もそう思うだろ?」
「う、うん……名前で呼んでくれたらうれしいな?」
大村さんはこれまでよりも顔を赤らめて、そして身長のせいもあって上目遣いにこちらを伺う。
俺はその姿に居た堪れなくなってーー
「ゆ、由紀……さん」
「ぁ……うん」
また変な空気になってしまった。
大村さんはこれまでにないくらい顔がゆでだこのように赤くなっているし、万智さんは万智さんでいい仕事したぜ、みたいな表情で顔を拭っているし……サムズアップしてくんな。
「わ、わわ私はここ、これで失礼するね!」
大村さん……いや由紀さんは呂律が回ってないような口調で、逃げるようにこの部屋から出て行こうとした。
由紀さんは生徒会室のドアの前で一旦止まりーー
「ま、またね、悠二……くん!」
由紀さんは今度こそ、この部屋から出ていった。
「……」
「おーおー、青春だな〜」
万智さんは由紀さんと俺の一連の行動を見て、どこか感慨深そうに言った。
「新田、どうだ、うちの妹は可愛いだろ」
「……」
聞かれても答えない俺に万智さんは語りかける。
「あれは由紀が中学生の時だったか、あの子は家族の贔屓目なしで見た目が整っている。だからか一部の女子たちに妬まれていじめ……とまではいかないが少し嫌がらせを受けていたみたいだ。あの性格だ……周りには友達がいて大きな行動に出てきたことはなかった。ただ、その時から少しずつ心からの笑顔……どこかぎこちない笑顔を見せてくることが多くなったんだ。情けないことに俺たち家族はそんなことには気づけなくてそれを知らされたのは高校に入学してからだった。そこからさらに何ヶ月か経った頃、あの子に元の笑顔が戻ったんだ。」
そこで万智さんは一度言葉をとめ、こちらを見る。
「誰かさんたちのおかげでな」
どうやら俺と……おそらく佐野さんのことだろう。
「……俺は特に何もしていないと思いますよ?」
「ああ、そのままでいいんだよ。……まぁ、由紀とこれからも仲良くしてやってくれってことだ」
「ええ、言われなくてもって感じですけどね」
「ふっ、まずは名前呼びに慣れるんだな」
『悠二くん』
さっき由紀さんに言われた言葉を思い出した。
「じゃあ俺はこれで失礼するぜ」
そう言って万智さんは席を立った。
俺は万智さんが退出するのを見おくってーー
「はぁ……なんでこんな恥ずかしいんだろ」
俺はソファに寄りかかって、深く息を吐いてから天井を見上げる。
俺の顔は誰が見ても一眼で分かるくらい真っ赤だった。
「これなら由紀さんじゃなくて俺の方がずっと……」
俺が心を落ち着けて、生徒会室を出るのに何十分もかかった。
ちなみに万智さんはずっと上裸のままだった。
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