第七章 少年と狐のお宿
時は老魔法使いを倒した日――その深夜。
場所は家の外。
「フレイよ、眠れんのか?」
と、背後から聞こえてくるカルラの声。
彼女はそのままフレイへ近づいて来ると、そのまま言ってくる。
「まさかとは思うが、初めて一般市民を手にかけて、後悔でもしておるのかの?」
「いや……ちょっと考えてた」
「考え事とな? 何か悩んでいるなら、我が聞いてやるのじゃ」
悩み事……ではない。
ただ、本当に考えていただけだ。
(カルラの言う通り、僕は産まれて初めて一般人を殺した。しかも、その一般人は王とは無関係の人だ)
こんな場所で隠遁していたのだ。
フレイが魔王に挑んだのも、その後どうなったかも知らない。
そんな可能性すらある。
(にもかかわらず、僕はそんな人間を殺した)
フレイの仲間達を殺したのは王都の連中だ。
フレイを裏切ったのは王都の連中だ。
正直、フレイが怒りを向けるべきは王都の連中だけでもいいはず。
だが、フレイの心が叫ぶのだ。
一人でも多く人間を殺せと――仲間が死んだのに、お前達が生きているのはおかしいと。
(八つ当たりに近い子供の様な感情……でも、全く止められない)
カルラはフレイに後悔しているのかと聞いていた。
答えは否だ。
むしろ、フレイは逆の感情を抱いていた。
無関係の人間を殺したのに、身体をかけめぐったのは高揚感だった。
「ぷっ……くははははははっ! なんじゃ、そうかそうか! フレイよ、おぬしはそんな事を考えていたのか!」
と、心を読んだに違いないカルラ。
彼女はフレイへと言葉を続けてくる。
「どうせ戸惑っていたのじゃろ? これまで正義を成して高揚していたのに、今ではまるで逆の行為で高揚する自分に」
「……あぁ」
「くくくっ、楽しむがいい……人の子よ! 自らの願望のために悪を成し、それを美酒とし酔いしれる! それぞ至高……魔族の生き方なのじゃ!」
「……カルラ、偉そうな喋りかた似合わないね」
「な、なんじゃと!」
と、狐尻尾をふりふりカルラ。
けれど、きっと彼女は慰めにきてくれたのだ。
(結果として僕は後悔なんてしてなかったわけだけど、カルラのその行為自体は嬉しいかな)
フレイはそんな事を考えた後。
カルラの頭を撫でながら、彼女へと言う。
「ありがとう、カルラ」
「むぅ、なにがじゃ!」
「とにかく、ありがとう」
「ふんっ! もう知らん! 我は寝るのじゃ! 生意気フレイは勝手にすればいいのじゃ!」
と、さっさと小屋に戻って行くカルラ。
フレイはそんな彼女を見たのち、一人呟くのだった。
「言うの忘れたけど、明日はカルラのレベルを上げないとな」
いくらフレイがカルラを守るとはいえ。
いつまでもカルラが3レベルでは、さすがに不安なのだから。
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