第四章 少年と狐、盗賊始めました
時は騎士団を倒した翌日、朝。
場所は王都から離れた洞窟。
「フレイよ、自分の手を見つめてどうしたのじゃ?」
と、言ってくるのはカルラだ。
フレイはそんな彼女へと言う。
「騎士団を倒したのに、レベルが6のままなんだ。少しおかしいと思ってさ……あの騎士団は軽く見積もって、レベル20はあった」
この世界のレベルには上限が存在する。
大抵の人間は30レベル前後がいいところ。
むろん、例外はある。
フレイやカルラ。
彼等まさにそれだ。
(たしか、カルラのレベル上限は120。僕と最後に戦った時、彼女のレベルはカンストしていたはず)
そして、フレイのレベル上限はというと――。
無限だ。
(カルラと戦った時のレベルは、150を超えてた……まぁ、今は二人そろって低レベルだけどさ)
だからこそ、フレイは期待していたのだ。
レベルの高い騎士団をまとめて倒せば、いっきにレベルがあがると。
と、そんなことを考えていたその時。
「そんなの当たり前なのじゃ! なんせ、おぬしは騎士団を倒した事になっていないのじゃから」
と、狐尻尾の毛づくろいをしながら、そんな事を言ってくるカルラ。
フレイはそんな彼女へと言う。
「それはどういうこと? あいつらは消滅の斬撃を受けて、消し飛んだはずだけど」
「だから、そういうことじゃ。あやつらは消滅したのじゃ」
「…………」
つまりあれか。
『倒した』ではなく、『勝手に消えた』的な判定ということか。
いやそれ。
「もっと早く言ってよ……」
「聞かれなかったのじゃ! それに、あの局面はどっちにしろ、あぁしないと勝てなかったのじゃ!」
と、狐耳をぴこぴこカルラ。
そう言われると、何も言えない。
通常、レベル差が4以上あると勝つのは難しくなる。
それは世間の一般常識として浸透しているのだから。
「はぁ……まぁいいや。どうせこれから格上とは、腐る程戦うことになるんだし」
「うむうむ、うじうじしない男は大好きなのじゃ」
と、寄り添ってくるカルラ。
フレイはそんな彼女を撫でながら、言葉を続ける。
「それで昨日の話の続きなんだけど……盗賊になろうと思うんだ」
「言っておったの。理由は――人間共への復讐がてら略奪をくりかえし、当面の生活費にするって感じかの?」
「夢がない言い方やめてくれないかな。それもあるけど、レベル上げが出来るってのがメインだよ」
人間を駆除しながら、レベル上げできる。
しかも物資も手に入るとなれば、一石二鳥どころではない。
「それでさ、カルラ。昨日、この洞窟のもっと先――山を登ったところに山小屋があったのを見た?」
「灯りがついていたところかの? ふむ、なんとなく言いたいことがわかったのじゃ」
と、狐尻尾をふりふりカルラ。
彼女は魔王の頃と全く同じ表情で、フレイへと言ってくるのだった。
「住民を殺せば、そこにあるものは家も含めて、全部我等のもの……そういうことじゃな?」
「カルラは僕を好きだって言ってくれたけどさ。僕も好きだよ――察しがいい奴はさ」