第二十五話 狐娘は抜いてみる
「やったぁあああああああああああっ! 勝利、勝利~~~~! 我等の大勝利なのじゃ!」
ぴょこぴょこ。
ふりふり。
とっても元気な様子のカルラ。
彼女は巨大トレント――ボロボロになって崩れゆくそれを指さし、フレイへと言葉を続けてくる。
「フレイよフレイ! あれを見るのじゃ! 地面に何か刺さっているのじゃ!」
「あれは……剣、かな。多分、巨大トレントのドロップ品だと思うよ」
「おぉう! レア物って奴じゃな!」
「フロアマスターのドロップ品だから、まぁそうなるだろうね」
「ふ、ふれぃいい~~……その……そのじゃな……我、な?」
きゅるきゅるん。
っと、瞳を輝かせてくるカルラ。
彼女が言いたいことなど、わかり切っている。
故にフレイはそんな彼女へと言う。
「僕は短剣メインで戦っていこうと思ってるから、俗に言う普通の剣――長剣は使わないよ」
「つ、つまり! つまりなんじゃ!?」
「巨大トレントがドロップした剣は、カルラにあげるよ」
「お、おぉおお~~~~~~!」
ふりふり。
と、狐尻尾を振りまくるカルラ。
(僕だけ魔法の巻物を手に入れちゃってたしね。何がドロップしても――仮に短剣がドロップしていても、カルラが欲しがったらあげるつもりだったけど)
未だ狐尻尾を振りまくっているカルラ。
ここまで喜んでいるのなら、ドロップ品を譲ったかいがあった。
それにしても、本当に嬉しそうだ。
だからこそ、フレイはカルラを守りたいと感じる。
再び手に入れる事が出来た大切な存在。
そんな彼女を、もう二度と誰にも奪われたくない。
「フレイ! 見るのじゃ! 我が剣を抜く瞬間を!」
と、いつの間にやら剣の近くに立っているカルラ。
彼女は狐尻尾をふりふり、ついに――。
「さぁ、抜けよ! 我が至高の剣!」
フロアマスターである巨大トレント。
そのレアドロップ品である剣。
それを高らかに掲げるのだった。




