第二十三話 初めての冒険②
「例え互いに危険でも、我等は強くなるためなら進む……世界消滅のためには、多少の痛みなどいとわない――フレイよフレイ、我の心配をして立ち止まる必要は、まったくないのじゃ」
と、言ってくるのはカルラだ。
フレイはそんな彼女へと言う。
「わかった……でも、僕はなるべく君を守るよ」
「その言葉、そっくりそのまま返すのじゃ!」
と、狐尻尾をふりふりカルラ。
フレイはそんな彼女と共に、通路を奥へと進む。
…………。
………………。
……………………。
そうして時は現在。
フレイとカルラは、件の開けた場所の前へと立っていた。
といっても今、目の前にあるのは。
「多分、この壁を開いたら、フロアマスターと即戦闘になる」
「準備を万端にしておけと、そういうことじゃな?」
と、言ってくるカルラ。
フレイはそんな彼女へ頷いた後、扉をゆっくりと開く。
その直後。
「っ――カルラ!」
言って、フレイはカルラを突き飛ばす。
すると。
先ほどまでカルラが居た位置。
そこに突き出してきたのは、槍の様な物質。
(これはなんだ……木の、枝?)
なんにせよ、まだ室内に入っても居ないのに攻撃をしかけてくるとは。
なんともやる気なフロアマスターだ。
「カルラ、行くよ! キミは左、僕が右だ!」
「了解じゃ!」
と、フレイと共に駆け出すカルラ。
フレイはそれを確認した後、目の前の敵へと目をうつす。
(最初の攻撃で察したけど、やっぱりトレント系の魔物か)
トレントは、いわゆる二足歩行する樹木だ。
だがしかし、前の前に居るのは、到底トレントとは似つかない。
なぜならば。
(あのオークみたいに膨れた胴体もそうだけど、なんだこの大きさ)
軽くてみても、一般的な民家の三倍を超えている。
などと、フレイが考えた瞬間。
再び襲ってくる大量の枝。
フレイはそれらを躱し、切り落とし。
巨大トレントへと接敵していく。
(っ……常人なら今の、串刺しだ――カルラは!?)
フレイはそんな事を考えたのち、カルラの方へと目を向ける。
するとそこにあったのは、踊るように枝を躱してくカルラの姿。
カルラは狐族だ。
きっと勘と気配に従い、ある程度攻撃を予測。
それを利用して攻撃を躱しているに違いない。
(それに狐娘族は身体能力が高い。それも幸いしたかな……となれば)
そんなカルラとの共同戦線。
取るべき方針は決まり切っている。
「カルラ! 足だ! すり抜け様にこいつの足を左右同時攻撃――」
「それを何度も繰り返すことによって、トレントの態勢を崩す……じゃな!?」
と、フレイの言葉を引き継ぎ言ってくるカルラ。
ここまでわかっているのならば、言うべき事はもう一つ。
フレイはそんな事を考えたのち、カルラへと言うのだった。
「トレントの弱点は例外なく胴体奥にあるコア――あいつが倒れたら、どちらかがそこを狙って!」
「くははははははっ! 任せるのじゃ! さぁ、勝つぞフレイよ!」