第二十二話 初めての冒険
時はスライムを倒してから数時間後。
現在、フレイとカルラは今もダンジョンを探索中だ。
「くらえ、我が剣閃!」
と、蜘蛛型の魔物へ攻撃を繰り出すカルラ。
彼女はその後、フレイへと言ってくる。
「蜘蛛がバランスを崩したのじゃ! さぁ、フレイよ……今じゃ!」
「了解!」
と、フレイはカルラと入れ替わり、前へと出る。
そして、すぐさま蜘蛛の頭部へと一撃を繰り出す。
蜘蛛はカルラの攻撃で、体勢を崩していた。
そのため、フレイの攻撃は躱される事なく直撃。
結果。
「やったぁあああああ! 勝利勝利、大勝利なのじゃ!」
と、狐耳をピコピコ、狐尻尾をぶんぶん。
ぴょこぴょこ跳ねまわっているカルラ。
もう、ダンジョンに潜ってから、それなりの時間が過ぎた。
カルラも接近戦に、本格的に慣れてきたに違いない。
それに。
(僕の今のレベルは9、カルラは7か……大分レベル差は埋まってきたかな)
本音を言うならば、もっとぽんぽんとレベルが上がって欲しい。
しかし、レベルは本来上がりにくいもの。
(これまでの僕達が……特に僕が異常だったんだよね。レベルだけ見たら、絶対に勝てない格上を倒してみたり)
と、フレイがそんな事を考えた。
まさにその時。
「むっ……フレイよ、少し静かにするのじゃ!」
と、さっきまで騒ぎまくっていたカルラ。
彼女は狐耳をピコピコさせた後、フレイへと言ってくる。
「よくない気配じゃ。あそこじゃ――あの通路の先、少し開けた場所に強烈な気配を感じるのじゃ!」
「当然だけど、強い魔物が居るってことだよね?」
「そうじゃ! これまで戦った魔物とは、まるで比にならない強さじゃ!」
「なるほど、ね」
フレイはその魔物がなんなのか。
それに心当たりがある。
それは――。
(ひょっとして、フロアマスターかな?)
フロアマスターとは、ダンジョンの特定層に居る特殊な魔物だ。
その特殊性をまとめるとこんな感じになる。
・かなり強い。
・フロアマスターを倒すと、そこに魔法陣が現れる。
・その魔法陣はそれぞれ、入り口と双方向転移が出来る。
・フロアマスターはレア物をドロップする可能性がある。
(そして、もちろんフロアマスターは倒すと、二度と沸かない)
正直言うなら、ここで倒しておきたいところだ。
けれど、安全性を考えるなら、少し変わって来る。
(僕は冒険者の動きは完璧に把握できる)
よって、格上であろうと、ある程度の差なら勝つ確信がある。
しかし、魔物――それもフロアマスターとなると話は違う。
なぜならば。
(フロアマスターは固有個体だ。しかも、特殊な能力を持っている事が多い)
ようするに。
フレイの経験則が、まるで役に立たないのだ。
そうなると、カルラの安全を保障することが出来ない。
無論、安全で言うなら、フレイ自身も危ない。
となれば。
「カルラ。残念だけど、今日の探索はここまでに――」
「フレイよ、その選択肢は間違っているのじゃ」
と、フレイの真正面から言ってくるカルラ。
彼女はそのまま、彼へと言葉を続けてくるのだった。
「例え互いに危険でも、我等は強くなるためなら進む……世界消滅のためには、多少の痛みなどいとわない――フレイよフレイ、我の心配をして立ち止まる必要は、まったくないのじゃ」




