第十四章 初めてのダンジョン探索②
さて、時はあれからすぐ。
場所はダンジョン内。
(レベルを失ってからは、これが初めてのダンジョンか)
油断は絶対に出来ない。
なんせ、フレイとカルラはまだ低レベル。
しかも、何かあっても助けは確実に期待できないのだから。
(だけど、普通のダンジョン探索より楽な点もある)
それは、フレイとカルラの目的がダンジョン踏破でないこと。
二人の目的はあくまで、レベル上げと装備の整え。
つまり。
魔物を倒し、宝箱を漁るだけで事足りるのだ。
わざわざ最奥にいるダンジョンマスターを倒す必要はない。
(勇者だった時は、ダンジョンマスターを死ぬ気で倒したっけな……そうしないと、ダンジョンからはいずれ、魔物が溢れだしてくるからね)
本当にため息しか出ない。
今となっては、昔の自分をぶっ飛ばしてやりたい。
なんせ、魔物溢れだして世界崩壊とか、望むところなのだから。
「フレイよ、ため息ついて……いったいどうしたのじゃ?」
と、言ってくるカルラ。
フレイはそんな彼女へと言葉を続ける。
「いや、ちょっと昔の行いを恥じていただけ。っていうかカルラ、気がついてる?」
「あぁ……奥の暗闇から魔物が近づいてきてることじゃろ? さて、どうするかの――我から行くか、おぬしから行くか」
「最初の一匹は同時に行こう。カルラ、どうせ譲る気ないよね?」
「くはは、よくわかっているのじゃ!」
と、そんなカルラの言葉。
それと同時、暗闇の中から現れたのはスケルトンだ。
奴の強さはたしか、レベル5相当。
二人がかりならば、まず安全に倒せる。
「カルラ。僕が突っ込むから、後ろから続いて。コンビネーションだ――あいつに隙ができたら」
「我がトドメじゃな? 任せておくのじゃ!」
と、カルラが言ってきたのとほぼ同時。
フレイは全力で地面を蹴る――背後からは、カルラが続いて走って来る気配。
ミスは許されない。
フレイがミスれば、カルラも巻き込んでしまう。
と、フレイはそんな事を考えたのち、自らの短剣を抜き放つ。
そして、スケルトンとの距離が縮まった。
まさにその時。
ついにスケルトンが動く。
奴が剣を水平に振い、攻撃をしかけてきたのだ。
だがしかし。
「遅い! それに、その攻撃はイメージ通りだ!」
言って、フレイはスライディングの要領でそれを回避。
そのまま、スケルトンの足元を潜り抜ける。
すると。
「……!?」
と、驚いた様子で態勢を崩すスケルトン。
フレイが通り抜け様に、奴の片足を短剣で切り落としたのだ。
となれば後は簡単。
「くははっ! ご苦労様じゃフレイ! そしてくらえ、矮小なる魔物よ――狐一刀流 《閃狐》!」
と、背後から聞こえてくるカルラの声。
直後、フレイの方まで飛んでくるのは、スケルトンの頭部だ。
きっと、彼女が無事スケルトンを倒したに違いない。
フレイはそんな事を考えたのち、体勢を整え背後を振り返る。
するとそこに居たのは――。
「いえぇ~~い! 我、大勝利じゃぁああ~~~~~!」
と、剣を振りまわしているカルラの姿。
いろいろ言いたいことはある。
技名がやばいとか。
剣振りまわすの危ないとか。
ダンジョンで騒ぐのはよくないとか。
しかし。
(あんなに狐尻尾ふって楽しそうだし、小言は無粋かな)