第十一章 初めてのお仕事準備
「車輪の音……馬車、きっと荷馬車じゃ!」
と、そんなカルラの言葉から、時は数分後。
場所はとある崖。
現在、
フレイとカルラは崖下にある山道を、二人で見下ろしていた。
理由は簡単だ。
「どうじゃフレイ! 我が言った通り、荷馬車が通っているのじゃ!」
と、言ってくるのはカルラだ。
フレイはそんな彼女へと言う。
「うん、さすがカルラだね。狐娘族だけあって耳がいい――僕には全く聞こえなかったよ」
「くははははははっ! 世辞はよすのじゃ! 褒められると、我も照れてしまうのじゃ!」
「いや、本心だよ」
「それでどうじゃ? 我が荷馬車を見つけたのは、おぬしに何か利があるかの?」
と、そんなカルラの質問。
ぶっちゃけこれ、かなりいい質問だ。
理由は簡単だ。
「僕だけじゃない。カルラにとっても、利があるかもしれないよ――ここに荷馬車が通っているのはね」
「ふむ……どういうことじゃ?」
と、ひょこりと首を傾げるカルラ。
フレイはそんな彼女の頭を撫でた後、荷馬車を見ながら考える。
崖下を通る荷馬車の数は五。
護衛も複数人いることから、行商人グループなのは見て取れる。
であるなら。
「あの荷馬車全部さ……僕達のものにできればいいと思わない?」
「ほーう。つまりそれは、あの荷馬車を襲うと……そういうことかの?」
と、ニヤリと言ってくるカルラ。
フレイはそんな彼女へと言う。
「行商人なら――それもあの規模なら、相当の金や物資を持っているはずだよね?」
「金や物資……いい響きなのじゃ! 直接的ではないが、それらがあれば確実に世界消滅に近づけるのじゃ!」
「装備を整えるのにも使えるし、腐敗した貴族あたりを買収したりもできる」
特に後者はかなり重要だ。
うまく使えば、だいぶ動きやすくなる。
(まぁ、貴族を使う時は当然――僕達の目的は話せないけどね)
いくら金にがめつい貴族でも、命が一番大事に違いない。
金が手に入るとはいえ、世界を消す手伝いを進んでやるとは思えない。
とにかく、今は目の前のことだ。
「それでフレイよ、今すぐ襲うのかの?」
と、言ってくるカルラ。
フレイはそんな彼女へと言う。
「いや、襲うのはもう少し後にしよう。今の僕達じゃ下手したら襲撃失敗する――まだ強さが足りてない」
「ふむ……でも、今を逃せばもう行商人が通らないかもしれないのじゃ!」
「その心配はないよ。僕の経験上――行商人っていうのは、必ず『数日おきに同じルートで街の往来』をする」
二日おきか。
三日おきか、はたまた一週間おきか。
それはわからない。
けれど、それさえ見極めればあとはこちらのもの。
罠などをしかけた上で、襲撃をしかけることができるのだから。
ようするに。
「とにかく、今はあの馬車が何日おきにここを通るのか――それを調べつつ、ダンジョンとかでレベルや武器を整えよう」
「うーむ、我慢するのは嫌いじゃが……それが最善なのじゃな?」
と、ひょこりと首を傾げてくるカルラ。
フレイはそんな彼女へと言うのだった。
「うん、絶対に成功させてみせるから、任せてよ」