プロローグ 少しだけ未来のお話
「盗賊になろうと思う」
「フレイよ、いきなりどうしたのじゃ?」
と、言ってくるのは隣を歩く少女。
黒のゴスロリドレスが似合う銀髪ロング、低身長狐娘――カルラだ。
彼女はフレイへと言葉を続けてくる。
「我等は今でこそ単なるお尋ね者じゃが、元は勇者と魔王……目立つのは危険だと言ったのは、おぬしなのじゃ」
「それはあくまで、僕達が閉じ込められていた牢から脱出して、王都を離れるまでだよ」
「つまり、もう目立ってもいいと?」
「目立たないに越した事はないけど、それだといつまでたっても目的を果たせないよね?」
「我等の目的……目的か。うむ、そうじゃな」
と、立ち止まりうつむいてしまうカルラ。
きっと、改めて確認しているに違いない。
フレイとカルラ……共通の目的を。
と、フレイがその事を改めて考えようとした。
まさにその時。
「そこで止まれ! 生きて王の支配領域から、出られると思ったのか!?」
「この大罪人共め! 勇者様の仲間達を殺し、王に反旗を翻した罪……ここで償え!」
と、背後から聞こえてくる声。
フレイが立ち止まり、振り返った先に居たのは。
王都を守護する騎士団連中だ。
わざわざ王都から出張ってきたに違いない。
(まぁ、王が送り込む冒険者達を、散々返り討ちにしてきたからね……それに僕達はもう少しで、王都周辺から脱出する)
向こうにとっては、フレイとカルラを確実に仕留める最後のチャンス。
きっと必死に違いない。
「フレイ、これを見るのじゃ! やっぱり来たのじゃ!」
と、言ってくるのはカルラだ。
彼女はフレイへと言葉を続けてくる。
「あまり目立たない様に旅していても結局これじゃ! 盗賊になどなったら、とんでもない目に合うのじゃ!」
「大丈夫だよ」
「どこかじゃ! 我は魔王だった時のレベルを剥奪され、魔力精製器官に甚大なダメージ……おかげさまで魔力を源とするスキルの類は全て使えん! 一方のおぬしも――」
「はいはい、わかってるよ」
たしかに、フレイもカルラと同じくレベルを剥奪されてしまっている。
要するに勇者時代に稼いだ経験値はおじゃん――最初からスタート状態だ。
もっとも、ここまでくる間。
フレイとカルラは冒険者をそこそこ返り討ちにしてきた。
結果として。
(僕のレベルが6、カルラが3くらいにはなってるけどね)
と、そんな事を考えたのち。
フレイはカルラへと言う。
「とにかく大丈夫。こいつらを倒して、もう少し行けば……王の目は届かなくなる」
「うむぅ……じゃがぁ!」
「カルラは僕を信じてくれるんでしょ? 僕の味方はカルラだけ、そしてカルラの味方は――」
「あーもう! わかったのじゃ! 我はフレイを信じるのじゃ! 信じるから、早くあいつらを倒すのじゃ!」
ジタバタ。
尻尾をふりふりカルラ。
フレイはそんな彼女の頭を撫でた後、騎士団連中へと言う。
「毎回、言ってるけどさ。僕はその勇者様とやらの仲間を殺してないんだけど」
「貴様! 何を言う! 勇者様が魔王と相打ちになった際、貴様は背後から残った勇者様の仲間達を奇襲――全員を殺したのだろう!」
「いや、だから……それ、誰が言ったの?」
「そんなのは決まっている! 我らが王だ!」
毎度毎度のこのセリフ。
フレイはため息を我慢しながら、騎士団へと言葉を続ける。
「王が嘘をついているとは思わないの?」
「貴様、王を侮辱するか!?」
ダメだこりゃ。
全く話にならない。
「王を妄信して、僕の話を聞く気はなしかは。これまでの奴らも全員そうだったし、今更聞いてもらおうとは思わないけどさ」
なんせ、こいつらは。
王都の連中は……いや。
この世界に住む人間は誰一人として信用ならない。
フレイを散々利用するだけして、誰の声も届かない地下に幽閉した王。
そして――。
(僕の仲間達を一方的に殺した王直属騎士団……さらに)
犠牲の上に成り立ったクソみたいな平和。
そこで平然と暮らしている人間共。
皆殺しにしてやりたい。
「カルラ……」
「ん、ようやく出番といったところかの?」
と、フレイの方へ寄ってくるカルラ。
彼女はそのまま彼へと、言ってくる。
「苛立ちが見えるが、落ち着くのじゃ」
「…………」
「大丈夫、安心するのじゃ。我だけは……この魔王カルラだけは、勇者フレイの味方なのじゃ……どんな時でも、の」
「わかってる――カルラ、きみの命は僕のものだ。きみが生きているのは、最後の最後で僕が加減したからだ」
「うむ。そして、おぬしの命も我のものじゃ――我が居なければ、おぬしは復讐の機会も与えられず、あの牢で死んで居たのじゃから」
フレイの目的。
そして、カルラの目的は簡単だ。
「固有スキル《聖装顕現》」
同時、フレイの手に現れるのは闇の様に黒い大剣。
彼はそれを振り下ろしながら、騎士団へと言う。
「僕とカルラは……この世界中の人間を、駆除する」
直後。
大剣から迸る闇の奔流。
それは瞬く間に騎士団を覆い尽くし――。
「だからさ……骨も残さず、消えろ――ゴミ共っ!」
僅か数秒後。
そこに立っていたのは、フレイとカルラだけであった。
はじめましての人、久しぶりの人。
どうも、ラノベ作家アカバコウヨウです。
ちょっと変わった物語書きたいと思い。
主人公を完全悪人にしよう!
と、書いてみました。
書いてて個人的にはかなり楽しい作品です。
読者様にとってはどうか、とても気になります。
さて……これは毎作、言ってることなのですが
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ブクマとポイントはどちらも、作者が連載する活力になっています。
冗談抜きで、執筆するモチベーションに関わって来るレベルです。
すでにしてくれた方、本当にありがとうございます。